スリップ比

記事数:(2)

駆動系

車の心臓部、トルクコンバーターの性能を徹底解説

車は、停止状態から動き出す時、そして速度を上げていく時に、大きな力が必要です。エンジンの動力を効率よくタイヤに伝えるために、トルクコンバーターという装置が重要な役割を果たしています。このトルクコンバーターの働きを理解する上で欠かせないのが、「滑り具合」と「力の増幅」という二つの概念です。 滑り具合は「滑り比」という数値で表されます。これは、エンジンの回転数(入力軸の回転数)に対して、タイヤにつながる軸(出力軸の回転数)がどれだけ回転しているかを比率で示したものです。車が完全に停止している状態、つまり動いていない状態(ストール状態)では、出力軸は回転していないため、滑り比は1となります。この時、トルクコンバーターは力の増幅を最大限に行います。つまり、エンジンからの力を何倍にも増幅させてタイヤに伝えるのです。この力の増幅は「トルク比」という数値で表され、ストール状態ではトルク比も最大値になります。これにより、停止状態から力強くスムーズに発進することが可能になるのです。 車が動き出すと、出力軸も回転し始めます。それに伴い、滑り比は1より小さくなっていきます。同時に、トルク比も徐々に減少していきます。つまり、速度が上がるにつれて、トルクコンバーターによる力の増幅効果は小さくなっていくのです。最終的には、エンジンの回転数とタイヤにつながる軸の回転数がほぼ一致する状態になり、滑り比はほぼ0に近づきます。この時、トルク比も1に近づき、トルクコンバーターの増幅効果はほぼなくなります。 この滑り比とトルク比の関係は、グラフで視覚的に理解することができます。トルクコンバーターの性能を表すグラフ(性能曲線)では、横軸に滑り比、縦軸にトルク比をとります。このグラフを見ると、滑り比が小さくなるにつれてトルク比も減少していく様子がはっきりと分かります。この性能曲線は、トルクコンバーターの特性を理解する上で非常に重要な情報源となります。
駆動系

滑らかな走りを実現する技術:クラッチ点

車は、心臓部である原動機で力を生み出し、その力を車輪に送り届けることで動きます。この力の伝わり方を理解することは、車がなめらかに動く仕組みを知る上でとても大切です。原動機で生まれた力は、回転運動という形で生まれます。この回転運動を効率よく車輪に伝えるための重要な部品の一つが、トルクコンバーターと呼ばれる装置です。 トルクコンバーターは、液体を使って力を伝える、一風変わった装置です。まるで扇風機のように、原動機側の羽根車が回転すると、その風が向かい側の羽根車を回し、力を伝えます。この時、液体を使うことで、原動機の回転数と車輪の回転数の違いを滑らかに調整することができます。例えば、発進時など、車輪が止まっている状態から動き出す際には、大きな力が必要になります。トルクコンバーターは、この時に原動機の回転力を増幅させて、スムーズな発進を可能にします。 また、走行中の速度変化にも対応できます。速度を上げる時、原動機はより速く回転しますが、車輪の回転速度は徐々に上がっていきます。この回転数の差を、トルクコンバーターが液体の流れを調整することで吸収し、急な衝撃や動力のロスを防ぎます。まるで水の流れのように、滑らかに力を伝えていくのです。 さらに、トルクコンバーターは、原動機と車輪を切り離す役割も担っています。信号待ちなどで車が停止している時は、原動機は回転し続けていますが、車輪は止まっている必要があります。この時、トルクコンバーターは液体の流れを遮断することで、原動機の回転が車輪に伝わらないようにし、無駄な燃料の消費を抑えます。このように、トルクコンバーターは、原動機で生まれた力を効率よく、そして滑らかに車輪に伝える、重要な役割を担っているのです。