スリップ角

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駆動系

車の旋回を支えるアッカーマン・ジャントー理論

車は、道の曲がり方に合わせて、向きを変える必要があります。この向きを変える動きを旋回動作と言います。旋回動作を実現するために、運転者はハンドルを回します。ハンドルを回すと、前輪の向きが変わります。この時、左右の前輪の角度は同じではありません。右に曲がる場合は、右側の前輪は左側の前輪よりも小さく曲がります。反対に、左に曲がる場合は、左側の前輪は右側の前輪よりも小さく曲がります。 なぜこのような角度差が必要なのでしょうか。それは、車がカーブを曲がる時、内側のタイヤと外側のタイヤでは進む距離が異なるためです。例えば、右カーブの場合、右側のタイヤはカーブの内側を通り、左側のタイヤはカーブの外側を通ります。カーブの外側の方が距離が長いため、左側のタイヤは右側のタイヤよりも長い距離を進む必要があります。もし左右の前輪が同じ角度で曲がると、内側のタイヤは進むべき距離よりも短い距離を進もうとするため、タイヤが地面を滑ってしまいます。タイヤが滑ると、車の動きが不安定になり、スムーズに曲がることができなくなります。 そこで、左右の前輪の角度に差をつけることで、内側のタイヤと外側のタイヤの進む距離の差を調整しています。内側のタイヤはより大きく曲がり、外側のタイヤはより小さく曲がることで、それぞれのタイヤが滑ることなく、地面をしっかりと捉えながら進むことができます。この左右のタイヤの角度差を適切に保つことで、車は安定してスムーズにカーブを曲がることができます。この角度差を制御する機構は、車の設計において非常に重要な要素の一つです。適切な角度差がなければ、車はカーブでふらついたり、滑ったりする可能性があります。そのため、自動車メーカーは様々な技術を用いて、この角度差を最適に制御し、安全で快適な運転を実現しています。
機能

車の安定性に寄与するセルフアライニングトルク

車は曲がる時、タイヤの向きを変えることで方向転換を行います。しかし、実際に車が曲がる際には、タイヤはただ単に指示された方向を向くだけでなく、様々な力が働いています。その中でも重要な働きをするのが、セルフアライニングトルクと呼ばれる力です。 セルフアライニングトルクとは、車が旋回する際に、タイヤが横滑りする時に発生する、回転力のことです。タイヤは路面に対して完全に真横には進まず、進行方向に対して少し斜めの角度がついて接地しています。この角度を横滑り角と言います。横滑り角が生じると、タイヤには横方向の力(コーナリングフォース)が働きます。このコーナリングフォースの作用点は、タイヤの中心よりも少し後方にあります。そのため、タイヤの中心点から後方への距離を腕の長さとする回転力が発生します。これがセルフアライニングトルクです。 セルフアライニングトルクをイメージするには、ショッピングカートを押す場面を想像すると分かりやすいでしょう。カートを斜めに押すと、カートの進行方向は押す方向よりも内側に向きを変えようとします。これは、タイヤが路面から押し戻される力によって、カートが元の直進状態に戻ろうとする働きによるものです。車の場合も同様に、セルフアライニングトルクは横滑り角を小さくし、車を直進状態に戻そうとする方向に作用します。 セルフアライニングトルクの大きさは、横滑り角の大きさ、タイヤの特性、路面の状態などによって変化します。例えば、横滑り角が大きいほど、セルフアライニングトルクも大きくなります。また、タイヤのゴムが硬いほど、セルフアライニングトルクは大きくなります。路面が滑りやすい場合、タイヤはグリップを失いやすいため、セルフアライニングトルクは小さくなります。 このように、セルフアライニングトルクは車の動き、特に旋回時の安定性に大きな影響を与えています。この力を理解することで、車の挙動をより深く理解し、安全運転に繋げることができます。
運転

車の安定性:アンダーステアとは

車は曲がりくねった道を進む時、運転する人の操作や道路の状態、そして車の設計によって様々な動き方をします。その中で、旋回不足と呼ばれる現象は、車の安定性を理解する上で重要な要素の一つです。旋回不足とは、一定の速さで円を描くように旋回している際に、速度を上げた時に旋回の半径が大きくなっていく現象を指します。簡単に言うと、ハンドルを切った以上に車が外側に膨らんでしまう状態です。これは、前輪の横滑り角度が後輪よりも大きくなることで発生します。 旋回不足は、主にタイヤの摩擦力と荷重移動によって引き起こされます。車がカーブを曲がるとき、遠心力によって車体は外側に傾こうとします。この時、タイヤの接地面にかかる荷重は外側のタイヤに偏ります。荷重が大きくなったタイヤは、より大きな摩擦力を発生させることができますが、限界を超えると横滑りが始まります。旋回不足の場合、前輪の荷重が大きくなりやすく、前輪が先に横滑りを始めるため、車が外側に膨らんでいくのです。 旋回不足は、一般的には安全な挙動とされています。なぜなら、速度を落とせば自然と旋回半径が小さくなり、元の軌道に戻るからです。そのため、多くの車は旋回不足傾向に設計されています。しかし、過度な旋回不足は、カーブを曲がり切れずにコースアウトする危険性もあります。また、急なハンドル操作や路面の変化によって、旋回不足から一転して、後輪が先に滑り出す旋回過剰(オーバーステア)に転じる可能性もあり、注意が必要です。 運転する人は、車の特性を理解し、速度やハンドル操作に注意することで、安全な運転を心がける必要があります。特に、雨や雪などで路面が滑りやすい場合は、タイヤの摩擦力が低下するため、旋回不足が発生しやすくなります。このような状況では、速度を控えめにし、急なハンドル操作を避けることが重要です。