セミトレーリングアーム

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車の構造

後退角:車の操縦安定性への影響

車は、走る、曲がる、止まるという基本的な動作を行うために、様々な部品が複雑に組み合わされています。その中で、路面からの衝撃を吸収し、タイヤを常に路面に接地させる役割を担うのがサスペンションです。サスペンションには様々な種類がありますが、その一つにセミトレーリングアーム式サスペンションというものがあります。このセミトレーリングアーム式サスペンションを理解する上で重要な要素の一つが「後退角」です。 後退角とは、車の後輪を支える部品であるスイングアームの回転軸の傾き具合を表す角度のことです。このスイングアームは、車体に取り付けられており、回転軸を中心に回転することで、後輪の上下動を可能にしています。後退角は、車体を上から見た平面図で、スイングアームの回転軸と車体の横方向の線が成す角度として測られます。 この後退角の値は、車の走行性能、特に曲がる時の安定性や運転のしやすさに大きく影響します。後退角が0度の場合、スイングアームの回転軸は車体の横方向と平行になります。この状態はフルトレーリングアーム式サスペンションと呼ばれ、車輪が路面の凹凸を乗り越える際に、車体が上下に大きく揺れる傾向があります。一方、後退角が90度の場合、回転軸は車体の縦方向と平行になります。これはスイングアクスル式サスペンションと呼ばれ、コーナリング時に車輪が大きく傾き、不安定になることがあります。 セミトレーリングアーム式サスペンションは、後退角を0度と90度の間の値に設定することで、フルトレーリングアーム式とスイングアクスル式の両方の特性をうまく組み合わせた構造になっています。適切な後退角を設定することで、乗り心地と操縦性のバランスを最適化することができます。後退角は、車の設計において重要な要素であり、走行性能を左右する重要な役割を担っていると言えるでしょう。
駆動系

セミトレーリングアーム式サスペンション解説

車は、路面からの衝撃を和らげ、滑らかな動きを実現するために、ばね機構が欠かせません。そのばね機構を支え、車輪の位置を的確に保つのが、今回取り上げる「半後方腕式」と呼ばれる仕組です。これは、左右の車輪がそれぞれ独立して上下に動く「独立懸架方式」の一種であり、片側の車輪が段差を乗り越えても、反対側の車輪への影響を少なくできるため、乗り心地と運転の安定性を向上させる効果があります。 半後方腕式の特徴は、車輪を支える腕の形と取り付け方にあります。「後方腕」と呼ばれる腕で車輪を支えるのですが、この腕を車体に固定する軸が、車体の幅方向に対して斜めに、外側に向けて取り付けられています。この斜めの取り付け方が、この仕組の肝です。 車体の骨格の一部である「補助骨格」は、多くの場合、アルファベットの「V」字のような形をしています。この補助骨格に、二股に分かれた「鳥の叉骨型」と呼ばれる腕が取り付けられています。この形は、横方向の動きもしっかり支えられる上に、ばねを取り付けるのも簡単という利点があります。 後方腕が斜めに取り付けられていることで、車輪が上下に動いた際に、車輪が少し内側に傾く動きが生まれます。この動きは、旋回時に車体が外側に傾こうとする力に対抗し、車体を安定させる効果を生み出します。また、二股に分かれた鳥の叉骨型の腕を用いることで、車輪の位置決め精度が向上し、より安定した走行性能につながります。 このように、半後方腕式は、乗り心地と運転の安定性を両立させる工夫が凝らされた、優れた仕組と言えます。
車の構造

車の安定性: 上反角の役割

車を横から眺めた時、前輪の取り付け角度に、走行安定性に深く関わる秘密が隠されています。それが上反角です。自転車の前輪を思い浮かべてみましょう。ハンドルの軸よりも前方にタイヤが接地していますね。この傾きが、車にも応用されているのです。 上反角とは、地面に垂直に立てた線と、タイヤの中心線を地面に延長した線との間にできる角度を指します。タイヤの接地点が、ハンドルの回転軸より後方にある場合を正の上反角、逆に前方の場合は負の上反角と呼びますが、一般的には正の上反角が用いられています。 では、なぜ上反角が必要なのでしょうか?それは、直進安定性を高めるためです。車が走行中、タイヤは常に路面からの力を受けます。上反角がついていることで、タイヤが回転する際に地面を押し出す力が発生し、この力が車体を元の直進状態に戻そうとするのです。ハンドル操作後、手を離しても自然と車がまっすぐ進むのは、この上反角の効果のおかげです。 高速走行時には、この効果が特に重要になります。速度が上がると、わずかな外乱でも車体が不安定になりがちです。上反角が適切に設定されていれば、これらの外乱の影響を軽減し、安定した走行を維持することができます。また、カーブを曲がった後も、スムーズにハンドルが中心に戻り、運転操作を楽にしてくれます。 上反角の角度は車種によって異なり、設計段階で緻密な計算に基づいて決定されます。最適な上反角は、車の大きさや重さ、サスペンションの特性など、様々な要素を考慮して設定される必要があるのです。
駆動系

懐かしの足回り:ダイヤゴナルリンク式サスペンション

斜めにつなぐ腕という名の、板ばねを使った繋ぎ方式は、半世紀ほど前に、後ろの車輪を動かす仕掛けを持つ車、特に後ろに機関のある車でよく使われていました。この繋ぎ方は、板ばねが斜めに配置されることで、車輪の上下運動と回転運動を同時に制御するという、独創的な構造を持っています。 具体的に説明すると、左右の後輪にはそれぞれ腕のような部品がついており、この部品が車体の中心に対して斜めに取り付けられています。この腕のような部品が、板ばねの役割を果たし、路面からの衝撃を吸収する役割を担います。この斜めの配置が、「斜めにつなぐ腕」の名前の由来となっています。 左右の車輪はそれぞれ独立して動くため、片方の車輪が段差に乗り上げても、もう片方の車輪には影響を与えず、安定した走行を続けることができます。また、独立して動くことで路面からの衝撃を効果的に吸収し、車内の揺れを抑え、乗り心地を良くします。 さらに、この方式には、当時高価だった部品を使う必要がないという大きな利点がありました。部品点数を減らすことで、製造費用を抑えることができ、より多くの人に利用しやすい車を作ることが可能となりました。 このように、斜めにつなぐ腕という名の繋ぎ方式は、独創的な構造と乗り心地の良さ、そして製造費用を抑えることができるという利点から、半世紀前の車において画期的な技術として広く採用されました。