車の心臓部、クランキングスピードを紐解く
車を動かすには、エンジンを始動させる必要がありますが、エンジンは自身で動き出すことはできません。まるで眠っているかのように、外部からの力添えが必要です。その大切な役割を担うのが、セルモーターと呼ばれる装置です。セルモーターは、電気を動力源として回転運動を作り出し、その回転力をエンジン内部の主要な回転軸であるクランクシャフトに伝えます。クランクシャフトが回転することで、エンジン内部のピストンが上下運動を始め、燃料と空気の混合気に点火し、爆発力を生み出す準備が整います。
この時、クランクシャフトがどれくらいの速さで回転するかが、エンジンの始動に大きく影響します。この回転速度こそが、クランキングスピードと呼ばれるものです。クランキングスピードが速ければ速いほど、エンジンはスムーズに目覚め、安定した状態へと移行しやすくなります。例えば、1分間に70回転するのと、1分間に200回転するのでは、明らかに後者の方が力強く、安定した始動につながります。これは、回転速度が速いほど、エンジン内部のピストンが素早く動き、混合気への着火が確実になり、スムーズな燃焼につながるからです。
クランキングスピードが遅い場合、エンジンが始動しにくくなるだけでなく、始動できたとしても不安定な状態になりがちです。これは、回転速度が遅いと、混合気への点火がうまくいかず、不完全燃焼を起こしやすくなるためです。不完全燃焼は、エンジンの出力低下や燃費の悪化だけでなく、排気ガスの増加にもつながるため、環境にも悪影響を及ぼします。
クランキングスピードは、いわばエンジンに勢いをつける最初のひと押しです。力強い始動のためには、適切なクランキングスピードを確保することが不可欠です。これは、バッテリーの状態やセルモーターの性能などに左右されます。日頃からこれらの点検を怠らず、エンジンの健康状態を保つことが大切です。