縮み:ものづくりの難題
鋼材の強さを確かめる方法の一つに、引っ張り試験というものがあります。引っ張り試験では、鋼材の両端を引っ張って、どれだけの力に耐えられるかを調べます。試験を続け、ある一定の力を超えると、鋼材の一部が急に縮み始める現象が見られます。これを局部収縮と言います。局部収縮は、鋼材が壊れる前兆とも言える現象です。
局部収縮が始まるまでは、鋼材は加えられた力に比例して伸びていきます。しかし、局部収縮が始まると、鋼材全体が伸びるのではなく、特定の部分だけが縮み始めます。これは、鋼材内部の構造変化が原因です。鋼材は小さな結晶の集まりでできていますが、力が加わることで、これらの結晶の配列が変化し、特定の場所に力が集中しやすくなります。この力の集中が、局部収縮の引き金となるのです。
局部収縮が始まると、鋼材が耐えられる力の最大値はすでに過ぎています。局部収縮が始まった後も鋼材を引き伸ばし続けると、縮んだ部分はさらに縮んでいき、最終的には破断に至ります。つまり、局部収縮が始まる時点での荷重は、鋼材が安全に耐えられる力の限界を示していると言えます。
橋や建物など、安全性が特に重要な構造物に使う鋼材は、必ず引っ張り試験を行い、局部収縮の特性を詳しく調べることが必要です。鋼材の種類や作り方によって、局部収縮の特性は大きく変わるため、用途に合った鋼材を選ぶことが重要です。例えば、高い強度が必要な橋には、局部収縮が起きにくい鋼材を選びます。また、建物の柱には、地震などで大きな力が加わっても、局部収縮による破断が起こりにくい鋼材を選ぶ必要があります。このように、局部収縮の特性を理解することは、安全な構造物を造る上で欠かせません。