四輪駆動車の動力伝達を支えるドリブンスプロケット
車は、エンジンが生み出す力をタイヤに伝えて走ります。四輪駆動車は、その名の通り四つのタイヤすべてに動力を伝えることで、力強い走りを可能にしています。この四つのタイヤに動力を分配する装置を分動装置と呼びます。分動装置には歯車を使うものと鎖を使うものがあり、鎖を使う方式で重要な役割を担うのが、今回紹介する被駆動鎖歯車です。被駆動鎖歯車は、回転する歯車の一種で、鎖を巻き付けることで回転する力を伝えます。名前の通り、駆動する側ではなく、駆動される側の鎖歯車です。では、どこから動力を受けているのでしょうか。それは、駆動鎖歯車と呼ばれるもう一つの鎖歯車からです。エンジンからの動力は、まず駆動鎖歯車に伝わります。そして、駆動鎖歯車は鎖を介して被駆動鎖歯車を回転させます。被駆動鎖歯車は、前輪駆動軸に繋がっていて、回転することで前輪に動力を伝えます。このように、被駆動鎖歯車は、エンジンからの動力を前輪に伝えるための、いわば中継地点のような役割を果たしているのです。分動装置には、前輪と後輪のどちらにどれだけの動力を配分するかを切り替える機能を持つものもあります。例えば、通常走行時は後輪駆動で燃費を良くし、滑りやすい路面では四輪駆動に切り替えて走破性を高めるといった具合です。このような切り替え機構を持つ分動装置においても、被駆動鎖歯車は重要な役割を担っています。状況に応じて前輪への動力の伝達を制御することで、様々な路面状況に対応した走りを可能にしているのです。近年では電子制御技術の進歩により、より緻密な制御が実現されており、四輪駆動車の走破性と安定性はますます向上しています。被駆動鎖歯車は、こうした技術の進化を支える、縁の下の力持ちと言えるでしょう。