車の心臓、スターターの役割
車は、自分で動き出すことはできません。まるで眠っている巨人のように、外部からの力によって目を覚まさせなければなりません。その大切な役割を担うのが、始動装置です。
ほとんどの車では、電気を動力源とする電動機と蓄電池を使ってエンジンを始動させます。この電動機には、小さな歯車(駆動歯車)が取り付けられています。エンジンには大きな歯車(はずみ車または駆動板の環状歯車)が付いており、始動の際には、小さな歯車が大きな歯車に噛み合います。小さな歯車が回転することで、大きな歯車、そしてエンジン全体が回転し始めます。この様子は、まるで小さな歯車が大きな歯車を力強く押し回し、眠れる巨人を目覚めさせるかのようです。
エンジンが始動すると、小さな歯車は大きな歯車から離れます。これは、エンジンの回転数が上がり、もはや小さな歯車の助けを必要としなくなるためです。始動装置の役割はここで完了し、小さな歯車は元の位置に戻ります。小さな目覚まし時計が、朝、静かに眠る人を起こして一日をスタートさせるように、始動装置は毎朝、エンジンを始動させ、車の活気あふれる一日を支えています。
始動装置は、限られた時間だけ大きな力を出すように設計されています。もし、エンジンが始動した後も小さな歯車が大きな歯車に噛み合ったまま回転し続けると、歯車が損傷する恐れがあります。そのため、エンジンが始動した後は、速やかに小さな歯車を大きな歯車から切り離す仕組みが備わっています。この精密な仕組みによって、エンジンは安全かつ確実に始動することができるのです。