据え切り:その功罪
車を停めたままハンドルを切る操作、いわゆる据え切りは、限られた場所での車の動きを大きく左右する、なくてはならない技術です。車庫入れや狭い道での転回など、まさに運転の腕の見せ所と言える場面で、その真価を発揮します。
例えば、縦列駐車を考えてみましょう。限られたスペースに車を滑り込ませるには、何度も切り返すのは避けたいものです。そこで据え切りが役に立ちます。停まった状態でハンドルを適切に切ることで、車の向きを微調整し、少ない切り返し回数でスムーズに駐車できるのです。
また、袋小路に入ってしまった時など、方向転換が必要な場面でも据え切りは必須です。切り返すスペースがない場合でも、据え切りを駆使することで、その場で180度回転し、来た道を戻ることができます。
さらに、据え切りは車の向きを変えるだけでなく、内輪差を小さくする効果もあります。内輪差とは、旋回時に前輪と後輪が描く円弧の半径の差のことです。ハンドルを大きく切った状態から動き出すと、内輪差が大きくなり、後輪が予想以上に内側を通ってしまいます。これは、縁石や壁に接触する危険性を高めます。据え切りで予めハンドルを切っておくことで、内輪差を小さくし、より安全に旋回を開始できるのです。
このように、据え切りは、日常の運転、特に狭い場所での車の取り回しにおいて、スムーズな操作を実現し、安全性を高める重要な役割を果たしています。運転技術を磨く上で、ぜひとも習得したい技術の一つと言えるでしょう。