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モリブデンコーティング:隠れた潤滑の立役者

機械の滑らかな動きを確保するには、摩擦をいかに減らすかが重要な課題です。部品同士が擦れ合うことで生じる摩擦は、エネルギーの損失や摩耗、発熱の原因となり、機械の性能低下や寿命の短縮に繋がります。そこで活躍するのが「潤滑」という技術です。潤滑とは、摩擦が生じる場所に潤滑剤を供給し、摩擦を低減する技術を指します。潤滑剤には、皆様がよくご存知の油やグリースなど様々な種類がありますが、過酷な環境下ではこれらの潤滑剤が使えない場合があります。例えば、宇宙空間のような真空状態や高温、高圧の環境では、油やグリースは蒸発したり、劣化したりしてしまいます。このような特殊な環境で威力を発揮するのが、二硫化モリブデンを使った「モリブデンコーティング」です。二硫化モリブデンは、固体潤滑剤の一種で、まるで幾重にも重なった薄い紙のような層状構造を持っています。この層と層の間が非常に滑りやすいため、摩擦を効果的に低減することができます。モリブデンコーティングは、この二硫化モリブデンを対象物に薄く塗布する技術です。コーティングされた表面は、高温、高圧、真空といった過酷な環境下でも安定した潤滑性能を発揮します。宇宙開発や航空機、自動車など、様々な分野で利用が広がっています。金属部品同士の摩擦による摩耗や損傷を防ぎ、機械の滑らかな動作を長期間維持する上で、モリブデンコーティングは重要な役割を担っていると言えるでしょう。近年では、環境保護の観点から、潤滑油の使用量を減らす取り組みが盛んに行われています。モリブデンコーティングのような固体潤滑技術は、環境負荷低減にも貢献する技術として、ますます注目を集めていくと考えられます。
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精密部品:バルブガイドの役割

車の心臓部である原動機の中では、小さな部品ながらも重要な働きをするものがあります。それが弁案内です。名前の通り、弁を案内する役割を担い、弁棒と呼ばれる弁の軸部分を支え、正確な動きを可能にしています。 この小さな部品のおかげで、吸気と排気の弁が正しいタイミングで開閉し、原動機が円滑に作動するのです。 弁案内は、主に軽銀合金で作られた原動機の一部品である原動機覆いに埋め込まれた、細い筒状の形をしています。原動機覆いは熱で膨張しやすい性質を持つため、熱膨張率の異なる材質を用いることで、温度変化による影響を最小限に抑えています。 弁案内の材質には、耐摩耗性に優れた焼き入れ鋼や、軽銀合金に混ぜ物をして強度を高めた合金などが用いられます。 そして、その内側は鏡のように滑らかに研磨されており、弁棒が抵抗なく上下に動くように精密に作られています。この滑らかな表面が、弁の開閉時の摩擦を減らし、滑らかな動きを実現する鍵となっています。 もし弁案内がなかったらどうなるでしょうか。弁は正しい位置で開閉することができなくなり、隙間から燃焼室内の圧力が漏れてしまったり、最悪の場合、弁が折れて原動機が壊れてしまうこともあります。 また、弁案内の摩耗や損傷は、燃費の悪化や排気ガスの増加、出力の低下など、様々な問題を引き起こす可能性があります。 ですから、弁案内は、私たちが気づかないところで原動機の性能を維持するために、まさに縁の下の力持ちとして重要な役割を果たしていると言えるでしょう。普段目にすることはほとんどありませんが、小さな部品一つ一つが、車の性能を支えているのです。