エンジンの隠れた力:サイドスラストを理解する
車はエンジンで動きますが、その心臓部で起きている力の働きについてお話します。よく耳にする出力以外にも、様々な力が働いており、その一つが横向きの力、すなわち「サイドスラスト」です。
エンジンの中には、ピストンという部品がシリンダーという筒の中を上下に動いて力を生み出しています。このピストンは、単に上下に動くだけでなく、シリンダーの壁にも力を加えています。この壁を押す横向きの力が、まさにサイドスラストなのです。
サイドスラストは、エンジンの回転を速くする力には直接関係していません。しかし、エンジンが長く使えるかどうか、そしてどのくらいスムーズに動くかには、大きな影響を与えます。
サイドスラストの向きと大きさは常に一定ではなく、エンジンの部品であるクランクシャフトという軸の回転に合わせて変化します。さらに、エンジンの回転数や車の走る速さ、積載量などによっても変化し、回転数が速く、負荷が大きいほど、サイドスラストも大きくなります。
このため、高い性能を持つエンジンでは、サイドスラストによる悪影響を抑えるための工夫が特に重要になります。例えば、ピストンやシリンダーの素材を工夫したり、潤滑油の性能を高めたりすることで、サイドスラストによる摩擦や摩耗を減らし、エンジンの寿命を延ばし、スムーズな動きを保つことができるのです。サイドスラストは目に見えませんが、車の性能を左右する重要な要素の一つなのです。