乗り心地とバンプストローク
車は道路を走る時、路面の凸凹によって上下に揺れます。この上下運動をうまく調整することで、乗り心地と安定した走行を両立させることができます。
この上下運動に深く関わるのが「バンプストローク」です。バンプストロークとは、車輪が路面の突起などで上に押し上げられた際に、どこまで動けるかを示す設計上の大切な値です。分かりやすく言うと、車輪が通常の位置から、ばねが縮みきった状態までの動ける範囲のことです。
一般的な乗用車では、このバンプストロークは70ミリメートルから120ミリメートルほどに設定されています。しかし、この値は車種や用途によって変わってきます。速い動きが求められるスポーツカーでは、この範囲を短く設定することで、車体の傾きを抑え、安定した走行を実現しています。逆に、デコボコ道を走るオフロード車では、この範囲を長くすることで、車輪が大きく動いてもばねが縮みきらず、タイヤが地面を捉え続けることができます。これにより、悪路でも安定した走行が可能になります。
バンプストロークが短すぎると、路面の衝撃が直接車体に伝わりやすく、乗り心地が悪化します。また、タイヤが地面から離れやすくなり、走行安定性も低下します。一方、バンプストロークが長すぎると、車体の揺れが大きくなり、ふらつきやすくなります。そのため、車種ごとに最適なバンプストロークを設定することが、快適な乗り心地と安定した走行性能を両立させる上で重要になります。
このように、バンプストロークは車の設計において重要な要素であり、車種ごとの特性に合わせて適切に設定されています。この見過ごされがちな部品の働きを知ることで、車への理解をより深めることができるでしょう。