安全を守る縁の下の力持ち:二重巻き鋼管
二重巻き鋼管とは、読んで字のごとく薄い鋼板を二重に巻き重ねて製造された鋼管のことです。自動車においては、ブレーキの油圧を伝える配管など、安全性に直結する重要な部分に使用されています。
まず、薄い鋼板を管状に巻き上げます。この時、一度巻き上げるだけでは強度が不足するため、同じ鋼板をもう一度巻き重ねて二重構造にします。この二重構造こそが、二重巻き鋼管の最大の特徴であり、名前の由来でもあります。二重に巻くことで、単層の鋼管に比べて強度と耐久性が向上します。
素材となる鋼板には、さびを防ぐための工夫が凝らされています。鋼板の表面には、銅めっきが施されており、腐食から鋼板を守ります。銅は、鉄よりもイオン化傾向が小さいため、鉄の代わりに酸化されることで、鉄の腐食を防ぐ犠牲防食の役割を果たします。
二重に巻かれた鋼板は、そのままでは剥がれてしまう可能性があるため、溶接によってしっかりと接合されます。これにより、鋼板同士が一体化し、より高い強度と安定性が得られます。溶接後には、さらに表面処理が行われます。クロメート処理と呼ばれるこの処理は、表面に薄い酸化皮膜を形成することで、耐食性をさらに向上させる効果があります。クロメート処理によって形成された皮膜は、緻密で安定しており、外部からの水分や酸素の侵入を防ぎ、さびの発生を抑制します。
このように、二重巻き鋼管は、一見単純な構造に見えますが、素材の選定から製造工程、表面処理に至るまで、様々な工夫が凝らされた、高い信頼性を誇る部品です。自動車の安全な走行を支える、縁の下の力持ちと言えるでしょう。