高性能の象徴 カーボンブレーキローター
速さを極限まで突き詰める競技の世界では、思い通りの場所で、確実に速度を落とせることが勝敗を大きく左右します。そこで、とてつもない制動力を発揮する部品として生まれたのが、炭素でできたブレーキ円盤です。
従来の鉄でできたブレーキ円盤には、大きな欠点がありました。速いスピードから何度も急にブレーキをかけると、摩擦による熱で円盤の温度が上がり、ブレーキの効きが悪くなってしまうのです。この問題を解決するために開発されたのが、高い温度にも耐えられる特別な材料でできた炭素ブレーキ円盤です。
この円盤は、炭素繊維を主な材料とし、特殊な樹脂で固めて作られています。1000度を超える高い温度でも、変わらずに高い性能を発揮し、圧倒的な制動力を生み出します。鉄製のブレーキ円盤では、高い温度になるとブレーキの効きが弱まってしまうのに対し、炭素ブレーキ円盤は高温になるほどブレーキが効きやすくなるという特徴も持っています。
この優れた制動力のおかげで、競技車はより速いスピードでコーナーに進入し、より短い距離で止まることができるようになりました。速さを追求する競技の世界には欠かせない、高い性能の象徴と言えるでしょう。また、炭素ブレーキ円盤は非常に軽く、鉄製の円盤に比べて大幅な軽量化を実現しています。これは、車の運動性能向上にも大きく貢献しています。
ただし、この高性能なブレーキには、一つ弱点があります。十分な温度まで温まっていない状態では、制動力が十分に発揮されないのです。そのため、競技車の運転手は、レース中にブレーキを適切な温度に保つ運転技術が求められます。
このように、炭素ブレーキ円盤は、メリットとデメリットを併せ持つ、特殊な部品と言えるでしょう。