ブレークダウン電圧

記事数:(2)

エンジン

放電電圧:エンジンの点火を司る重要な要素

自動車のエンジンを始動させるには、ガソリンと空気の混合気に点火する必要があります。その点火の役目を担うのが点火プラグであり、点火プラグが火花を飛ばすために必要な電圧のことを放電電圧といいます。この火花が混合気を爆発させ、ピストンを動かす力を生み出します。 放電電圧は、常に一定の値ではなく、電圧を印加してから火花が飛ぶまで、刻一刻と変化していきます。ちょうど山のような波形を描きながら上昇し、火花が飛ぶ瞬間に最大値に達します。この最大値のことを一般的に放電電圧と呼びます。では、なぜこのような変化が起こるのでしょうか。それは、火花を飛ばす過程が、複雑な電気現象を伴うためです。 点火プラグの電極間に電圧が印加されると、電極間の空気に電気が流れ始めます。最初はごくわずかな電流ですが、電圧が高まるにつれて電流も増加し、ついには電極間の空気が電気を流す抵抗に耐えきれなくなります。この瞬間、電極間に電気の道筋が作られ、激しい電気の流れ、つまり火花が発生します。この火花が飛ぶ瞬間に電圧は最大値、すなわち放電電圧に達するのです。 放電電圧の値は、エンジンの状態や点火プラグの状態に大きく左右されます。例えば、エンジンの圧縮比が高いほど、混合気に点火するためにはより高い放電電圧が必要になります。また、点火プラグの電極が汚れていたり、隙間が大きすぎたり小さすぎたりすると、適切な火花を飛ばすことができず、エンジンの性能に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、常に最適な放電電圧を供給することが、エンジンの効率的な運転には欠かせません。定期的な点検と適切な部品交換を行い、エンジンの調子を整え、快適な運転を心がけましょう。
エンジン

点火放電波形を読み解く

燃焼を起こす火花、その電気の流れ方を波形で表したものが点火放電波形です。これは、自動車の心臓部である発動機の中で、燃料と空気の混合物に火をつける小さな部品、点火栓の働きぶりを示す大切な情報です。ちょうど心電図が心臓の状態を伝えるように、この波形は発動機の点火の状態を詳しく教えてくれます。 この波形は、横軸に時間を、縦軸に電圧または電流の強さを示しています。時間と共に変化する電気の流れ、つまり放電の様子が曲線で描かれるのです。この曲線の形を見ることで、点火が適切に行われているか、問題がないかを調べることができます。 点火がうまくいかないと、発動機は調子を崩し、燃料も多く使ってしまいます。例えば、力が出なくなったり、スムーズに走らなくなったり、燃費が悪くなったりする原因の一つが、この点火不良です。ですから、点火放電波形を理解することは、自動車の調子を保つ上でとても重要です。 理想的な点火は、燃料と空気の混合物を完全に燃やし尽くす、力強い燃焼を引き起こします。これにより、発動機の力は最大限に引き出され、燃費も良くなります。点火放電波形からは、点火したかどうかだけでなく、その強さや持続時間といった質の情報も読み取ることができます。 経験豊富な整備士は、この波形を注意深く見て、まるで医者が心電図を読み解くように、点火装置の不具合箇所を特定します。そして、その情報に基づいて適切な修理を行い、発動機の調子を元通りにするのです。まるで発動機の言葉を読み解くように、点火放電波形は整備士にとってなくてはならない情報源なのです。