ブローバイガス

記事数:(6)

エンジン

隠れた立役者:スカベンジングポンプ

車は、心臓部である発動機を滑らかに動かすために潤滑油を使っています。この潤滑油は、発動機内部の金属同士の摩擦を減らし、摩耗を防ぐ重要な役割を担っています。しかし、潤滑油は高温にさらされたり、金属の摩耗粉が混ざったりすることで徐々に劣化していきます。また、発動機のピストンが上下に動く際に、潤滑油の一部は霧状になり、燃焼ガスと共に発動機の下部に溜まります。この霧状の油と劣化油を回収するのが、回収ポンプの仕事です。 回収ポンプは、潤滑油を送る油ポンプのおよそ二倍の吸引力を持つ強力なポンプです。発動機の下部にあるオイルパンに溜まった潤滑油を吸い上げ、再び循環させることで、常に新鮮な潤滑油が発動機内部に行き渡るようにしています。また、回収ポンプは発動機の下部を少しだけ低い圧力に保つ働きもしています。これは、潤滑油が溜まりすぎたり、圧力が上がりすぎたりするのを防ぐためです。ちょうど、掃除機でゴミを吸い取るように、回収ポンプは発動機内部を綺麗に保つ役割も担っているのです。 もし、回収ポンプが正常に作動しないと、発動機内部に劣化油や霧状の油が溜まり、様々な問題を引き起こします。例えば、発動機の性能が低下したり、部品の寿命が縮んだりする可能性があります。また、最悪の場合は発動機が焼き付いてしまうこともあります。そのため、回収ポンプは発動機の正常な動作に欠かせない重要な部品と言えるでしょう。定期的な点検と交換で、回収ポンプの性能を維持することが、車を長く快適に使う秘訣の一つです。
エンジン

エンジンの呼吸:クランク室掃気

自動車の原動力であるエンジン。その中心部では、ガソリンと空気の混合気が爆発し、ピストンと呼ばれる部品を上下に動かすことで力が生まれます。この爆発は高温高圧な状態を作り出し、大きな力を生みますが、同時に一部のガスがピストンとシリンダー壁のわずかな隙間から漏れてしまうという問題も発生します。この漏れたガスをブローバイガスと呼びます。 ブローバイガスには、燃え残ったガソリンや水分、爆発によって生まれた有害な物質が含まれています。これらの物質がエンジン内部のクランク室に溜まると、エンジンオイルの性質を悪くし、エンジンの性能を低下させ、寿命を縮めてしまう原因となります。 そこで重要なのが、クランク室掃気です。クランク室掃気とは、クランク室内の空気を入れ換えることで、エンジンオイルの劣化を防ぐ仕組みです。新鮮な空気をクランク室に取り込み、不要なブローバイガスを外に排出することで、エンジン内部を良い状態に保ちます。これは、エンジンの健康を保つために欠かせない役割を果たしています。 もしブローバイガスをそのままにしておくと、エンジンオイルの粘り気が下がり、潤滑油としての働きが悪くなります。さらに、スラッジやカーボンといった汚れが溜まり、エンジン内部を汚してしまいます。また、ブローバイガスには金属を腐食させる酸性の物質も含まれているため、エンジンの部品を傷める可能性もあります。これらの問題を防ぐためにも、クランク室掃気はエンジンの正常な動作に不可欠なのです。
エンジン

車の心臓を守る、隠れたクローズド式ベンチレーション

車は移動のためにエンジンを動かします。エンジンの中ではガソリンが燃えて動力を生み出しますが、この燃焼の過程で、どうしても一部のガスがピストンとシリンダーの間から漏れてしまいます。この漏れたガスをブローバイガスと言います。 以前は、このブローバイガスをそのまま大気に放出していました。しかし、このガスには有害な物質が含まれており、環境への悪影響が心配されるようになりました。そこで、ブローバイガスを大気に放出しない仕組みが開発されました。これがクローズド式ベンチレーションシステムです。 クローズド式ベンチレーションシステムは、ブローバイガスを再びエンジン内部に戻して燃焼させる仕組みです。まるで人間が呼吸をするように、エンジン内部でガスを循環させていることから、「ベンチレーション」と呼ばれています。ブローバイガスを再び燃焼させることで、排気ガス中に含まれる有害物質を減らし、大気をきれいに保つことに貢献しています。 具体的には、ブローバイガスはまず、エンジン上部にあるバルブカバーから取り込まれます。その後、オイルセパレーターという装置でガスに混じったオイルとガスを分離します。分離されたオイルはオイルパンに戻され、ガス成分だけが吸気系に戻されて再びエンジンで燃焼されます。この一連の循環によって、有害物質の排出を抑え、環境負荷を低減しているのです。 近年では、排気ガス規制の強化に伴い、このクローズド式ベンチレーションシステムはほぼ全ての車で採用されています。環境保護の観点からも、このシステムの役割は非常に重要と言えるでしょう。
エンジン

ブローバイガスを再利用する仕組み

車の心臓部であるエンジンは、中で爆発を起こして力を生み出しています。この爆発は、ピストンと呼ばれる部品がシリンダーと呼ばれる筒の中を上下に動くことで起こります。ピストンとシリンダーの間には、摩擦を減らすため、ごくわずかな隙間が空いています。この隙間は、髪の毛ほどの細さですが、ここから燃焼ガスが漏れ出てしまうことがあります。これが、エンジン内部のガス漏れ、いわゆる「ブローバイガス」です。 このブローバイガスには、燃え残りの燃料や、既に燃えた後のガスが含まれています。特に、エンジンが混合気を圧縮する行程では、シリンダー内の圧力が非常に高くなるため、多くのガスが隙間から漏れ出てしまいます。そのため、ブローバイガスには、燃え残りの燃料が多く含まれることになります。 もし、このブローバイガスをそのまま大気に放出してしまうと、大気汚染につながってしまいます。燃え残りの燃料は有害な物質を含んでいるため、環境に悪影響を与えます。そこで、環境を守るために、ブローバイガスを大気に放出することは法律で禁止されています。 ブローバイガスを処理するために、車は「ブローバイガス還元装置」という特別な仕組みを備えています。この装置は、漏れ出たガスを再びエンジンに戻し、燃焼させることで、大気汚染を防ぎます。ブローバイガス還元装置のおかげで、車は環境への負荷を減らしながら走ることができるのです。定期的な点検と整備によって、この装置を正常に保つことが大切です。そうすることで、環境保護に貢献できるだけでなく、エンジンの調子を保ち、燃費を向上させることにもつながります。
環境対策

排ガスを抑える技術:仕組みと重要性

自動車の排気ガスは、空気を汚す大きな原因の一つです。そのため、排気ガスに含まれる悪い物質を減らすための様々な工夫が長年にわたり続けられてきました。排気ガスをきれいにする仕組みは、大きく分けて三つの段階で進められます。 まず第一段階は、エンジン内で燃料を燃やす際に、そもそも悪い物質がなるべく発生しないようにすることです。これは「燃焼前処理」と呼ばれます。エンジンの設計を工夫したり、燃料を噴射する量やタイミングを細かく調整することで、より完全な燃焼を目指します。燃料がしっかりと燃えれば、不完全燃焼による有害物質の発生を抑えることができます。 第二段階は「燃焼後処理」です。エンジンから出た排気ガスを、排気管を通る間にきれいにする処理です。この段階で重要な役割を担うのが「触媒変換装置」です。排気ガス中の有害物質は、この装置の中で化学反応を起こし、無害な物質に変化します。例えば、一酸化炭素は二酸化炭素に、窒素酸化物は窒素と酸素に、炭化水素は水と二酸化炭素に変わります。 最後の第三段階は、エンジン以外の部分から出るガスへの対策です。燃料タンクから蒸発するガソリンの蒸気(燃料蒸発ガス)や、ピストンとシリンダーの間から漏れるガス(ブローバイガス)なども、大気を汚染する原因となります。燃料蒸発ガスは、活性炭を使って吸着し、後からエンジンに送って燃やすことで処理します。ブローバイガスも同様に、エンジンに吸い込ませて燃焼させることで処理します。 これら三つの段階を組み合わせることで、排気ガスに含まれる有害な物質を大幅に減らすことができます。自動車メーカーは、より環境に優しい自動車を作るために、これらの技術の開発・改良を日々進めています。
エンジン

オイルセパレーター:エンジンの縁の下の力持ち

車の心臓部であるエンジンは、精密な部品が複雑に組み合わさって動いています。エンジンのなめらかな動きを守るために、潤滑油であるエンジンオイルはなくてはならない存在です。しかし、エンジン内部では、ピストンの上下運動によって燃焼ガスがわずかに漏れ出て、オイルに混ざってしまうことがあります。この漏れ出たガスは、ブローバイガスと呼ばれ、オイルに混ざるとオイルの粘度を下げたり、酸化を促進したりして、オイルの性能を低下させる原因となります。 そこで活躍するのが、オイルセパレーターです。オイルセパレーターは、エンジンオイルに混ざってしまったブローバイガスを分離し、オイルの劣化を防ぐための装置です。まるでコーヒーフィルターのように、オイルとガスをきれいに分けてくれるのです。オイルセパレーターの仕組みは、主に遠心分離とフィルターの組み合わせによって実現されています。まず、ブローバイガスとオイルの混合気は、オイルセパレーター内部へと導かれます。すると、サイクロン掃除機のように、内部で混合気は回転運動を始めます。この回転によって、比重の重いオイルは外側へと押し出され、軽いガスは中心部へと集められます。さらに、フィルターを通過することで、微細なオイルの粒子も除去され、より精度の高い分離が可能になります。 分離されたオイルは、再びエンジン内部へと戻り、潤滑の役割を果たします。一方、分離されたブローバイガスは、吸気系へと戻され、再燃焼されます。これにより、大気汚染の防止にも貢献しています。オイルセパレーターは、エンジンオイルの性能を維持し、エンジンの寿命を長く保つだけでなく、環境保護にも役立つ重要な部品なのです。 定期的な点検や清掃、交換を行うことで、エンジンの最適な状態を維持し、快適な運転を長く楽しむことができます。