プロポーション

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車の構造

車の印象を決めるオーバーハング

車の形を決める上で、車体の前後の端からタイヤの中心までの距離、つまり前後の出っ張り具合はとても大切です。この出っ張りを前後の「あまり」と呼び、前のあまりを「前あまり」、後ろのあまりを「後ろあまり」と言います。これらの長さは、車の見た目や走り方に大きく影響します。 車の全長が決まっている時、前後のあまりを短くすると、タイヤとタイヤの間の距離、つまり軸間距離を長くすることができます。軸間距離が長いと、車内空間を広げることができ、ゆったりとした乗り心地を実現できます。また、高速道路での安定性も向上します。一方、前後のあまりを長くすると、軸間距離は短くなります。軸間距離が短いと、小回りが利き、狭い道での運転がしやすくなります。 例えば、高級車は一般的に前後のあまりが長く、軸間距離も長いです。これは、優雅な見た目と快適な乗り心地を両立させるためです。一方、軽自動車や小型車は前後のあまりが短く、軸間距離も短くなっています。これは、都市部での取り回しの良さを重視しているためです。 前後のあまりと軸間距離は、車の見た目全体の釣り合いを決める重要な要素です。前後のあまりが長すぎると、間延びした印象になり、短すぎると詰まった印象になります。軸間距離が長すぎると、車体が大きく見えて運転しにくく感じることがあります。逆に短すぎると、安定性が低くなる可能性があります。 デザイナーは、車の用途や目的、顧客の好みに合わせて、前後のあまりと軸間距離を最適なバランスに調整します。これにより、美しい見た目と優れた走行性能を両立させた車を作り出すことができるのです。前後のあまりは、単なる見た目だけの問題ではなく、車の機能や性能にも深く関わっています。そのため、車を選ぶ際には、前後のあまりにも注目してみると、その車が持つ特徴や個性をより深く理解できるでしょう。
車のタイプ

憧れの車体、今と昔

古き良き時代の車を語る上で欠かせないのが、ロングノーズショートデッキと呼ばれる車体の形です。これは、前方が長く後方が短い独特のシルエットを指し、1930年代を代表する高性能車や高級車によく見られました。 なぜこのような形になったのかというと、まず前輪と後輪の間に位置するフロントガラス。当時はこの配置が最も美しいとされ、設計の基準となっていました。さらに、大きな高性能のエンジンを搭載するために、必然的にエンジンルームである前方の部分が長くなりました。対照的に、後部座席は実用性を重視するよりも、車全体のバランスを考えてコンパクトにまとめられました。 ロングノーズショートデッキは、単なる流行ではなく、当時の最先端技術の象徴でした。大きなエンジンをスムーズに動かす高度な技術力、そして美しいシルエットを作り出す設計力。これらを兼ね備えた車は、限られた職人だけが作り出すことができました。まさに走る芸術作品と呼ぶにふさわしいでしょう。 現代の車のように大量生産ではなく、一台一台に職人の技と魂が込められていたからこそ、この時代の車は独特の魅力を放っています。それは、富裕層だけのステータスシンボルとして羨望の眼差しを集めただけでなく、時代を超えて愛される理由の一つと言えるでしょう。現代の車にはない、古き良き時代のものづくりの精神を感じさせる、特別な存在なのです。