ラダービーム形ベアリングキャップ:高剛性と静粛性を実現する技術
自動車の心臓部であるエンジンにおいて、動力を生み出すためのクランク軸を支える重要な部品が軸受です。この軸受をしっかりと固定し、エンジンの強度と剛性を保つ役割を担っているのが、軸受蓋と呼ばれる部品です。その中でも、はしご形軸受蓋は、その名の通り、はしごのような形をした特殊な構造を持っています。
従来、エンジンの強度と剛性を確保するために、シリンダーブロックのスカート部分(裾の部分)を長くした、いわゆる深スカート式シリンダーブロックが採用されていました。しかし、この方式では、スカート部分が長くなる分、エンジンの重量が増加してしまうという問題がありました。そこで登場したのが、はしご形軸受蓋です。
はしご形軸受蓋は、はしごの横木のように水平に伸びた複数の補強構造を持っています。この構造が、スカート部分を短くしても、深スカート式と同等、あるいはそれ以上の剛性を確保することを可能にしました。まるで橋の構造のように、複数の横木が力を分散させ、エンジンのねじれや振動を効果的に抑制するのです。
この構造により、エンジンの軽量化を実現しながら、高い強度と剛性を両立させることができます。自動車の燃費向上や運動性能の向上に、大きく貢献していると言えるでしょう。また、はしご形軸受蓋は、エンジンの回転バランスを安定させる効果もあり、静粛性や耐久性の向上にも寄与しています。まさに、小さな部品ながらも、自動車の性能向上に大きく貢献する縁の下の力持ちと言えるでしょう。