ベンディックス

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駆動系

トラクタジョイント:オフロードを駆けるための技術

動力を受け取って車輪を回転させる部品、駆動軸。この駆動軸は、路面の凹凸や車の動きに合わせて上下左右に揺れます。この揺れ動きを滑らかに吸収し、常に安定した動力を車輪に伝える工夫が等速継手です。その一種である『引張り継ぎ手』は、かつて農作業で活躍するトラクターや、戦場で使われる軍用車両で広く使われていました。これらの車両は、舗装されていないでこぼこ道を走ることが多く、路面からの衝撃や振動は大きな問題でした。そこで、駆動軸の角度変化を滑らかに吸収し、安定した動力の伝達を可能にする新しい仕組みが求められました。 この課題を解決するために開発されたのが、ベンディックス社による『引張り継ぎ手』です。これは初期の等速継手の一つで、でこぼこ道など、厳しい環境での使用に耐えられるよう頑丈に設計されました。特に、第二次世界大戦中は、戦場で活躍する軍用車両にとって、その信頼性の高さと壊れにくさが高く評価されました。悪路でも安定して走れるようになったことで、戦場での車両の動きを格段に向上させることに貢献したのです。 『引張り継ぎ手』は、複数の部品が組み合わさってできています。動力を伝える軸の先端には、複数の溝が彫られた球状の部品が取り付けられています。この球状部品は、外側の受け皿となる部品の中に収まっており、駆動軸が上下左右に動いても、球状部品は受け皿の中で自由に動くことができます。この球状部品と受け皿の組み合わせによって、駆動軸の角度変化を吸収し、常に安定した動力を車輪に伝えることが可能になったのです。『引張り継ぎ手』は、その後の等速継手の技術発展に大きな影響を与え、自動車の歴史における重要な出来事の一つと言えるでしょう。
エンジン

車の進化:電子制御燃料噴射

車の心臓部であるエンジンは、燃料と空気の混合気を燃焼させることで動力を生み出します。その燃料供給を精密に制御するのが、燃料噴射という仕組みです。現在主流となっているのは、電子制御式燃料噴射装置です。これは、エンジンが必要とする燃料の量を、電子制御によって緻密に調整する高度な技術です。 燃料はまず、燃料タンクから燃料ポンプによって吸い上げられ、燃料配管を通ってエンジンルームへと送られます。このとき、燃料には高い圧力がかけられています。高圧になった燃料は、インジェクターと呼ばれる噴射装置に送られます。インジェクターは、エンジン内部の吸気管、もしくは燃焼室に直接取り付けられています。 インジェクターの心臓部には、電磁弁が備わっています。これは、電気信号によって開閉を制御できる弁です。エンジンのコンピューターは、様々なセンサーの情報をもとに、エンジン回転数やアクセルの踏み込み量、空気の温度などを計測し、最適な燃料噴射量を計算します。そして、その計算結果に基づいた電気信号をインジェクターに送ります。信号を受け取ったインジェクターは電磁弁を開閉し、高圧燃料を霧状にしてエンジン内部に噴射します。 電子制御式燃料噴射装置の大きな利点は、燃料供給の精度が非常に高いことです。従来の機械式のキャブレター方式と比べると、格段に正確な燃料制御が可能となりました。これにより、エンジンの燃焼効率が向上し、燃費の改善と排気ガスの浄化に大きく貢献しています。また、エンジンの出力向上にも一役買っています。 電子制御式燃料噴射装置は、環境性能と走行性能の両立に欠かせない、現代の車にとって無くてはならない技術です。今後も、さらなる技術革新によって進化を続けることでしょう。