ダッシュクロスメンバー:車の縁の下の力持ち
運転席と助手席の足元の空間、ちょうど床板の奥まったところに、横たわるようにして配置されているのが、車の骨格の一つである「渡り支え」です。これは、ダッシュボードと呼ばれる、計器類などが配置されたパネルの下部に、斜めに取り付けられています。ちょうど、家の屋根裏部屋の梁のように、左右を繋ぐ形で、三角形の形をした支えが設置されているのです。この支えこそが、渡り支えであり、あまり目にする機会はありませんが、車にとって大変重要な役割を担っています。
ダッシュボードの下部は、後方に向かって傾斜しているため、そのままでは強度が不足しがちです。そこで、この渡り支えを左右に渡すことで、ダッシュボード周辺の強度を高め、剛性を向上させているのです。
一見すると、小さな部品のように思えますが、この渡り支えは、乗員の安全を守る上でも重要な役割を果たしています。前面衝突の際、衝撃を吸収し、乗員へのダメージを軽減する効果が期待できます。また、渡り支えは、単なる支えとしてだけでなく、様々な部品の取り付け基盤としても利用されています。例えば、ハンドルやブレーキペダル、エアコンユニットなど、運転席周りの多くの部品がこの渡り支えに固定されています。ちょうど家が土台の上に建っているように、渡り支えは様々な機器や配線を支える土台のような役割を果たしているのです。
渡り支えの材質は、一般的には鋼鉄が用いられますが、軽量化のためにアルミニウムなどの素材が用いられる場合もあります。また、形状も車種によって異なり、シンプルな一本の棒状のものから、複雑な形状のものまで様々です。このように、渡り支えは、安全性、快適性、そして車の設計全体に影響を与える重要な部品と言えるでしょう。