ボルト締結

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車の生産

回転角で締める!高強度ボルト締結の秘密

ねじを締める作業は、ものを作る上で欠かせません。しっかりと締め付けないと、部品が外れて大きな事故につながることもあります。ねじの締め付け具合は、昔から締め付ける力、つまり締付けトルクで管理されてきました。しかし、締付けトルクによる管理では、ねじと部品の間の摩擦力の影響を受けやすく、狙い通りの締め付け具合にならないことがありました。そこで登場したのが、回転角締付け法です。 回転角締付け法とは、締付けトルクに加えて、ねじをどれだけ回転させたかという角度も一緒に管理する方法です。まず、ねじを軽く締めて部品同士を密着させます。この時の締付けトルクは、目標とする締付けトルクよりも小さくなります。この軽い締め付けによって、部品とねじの間の摩擦がある程度安定します。次に、あらかじめ決めた角度だけねじをさらに回転させます。この角度は、ねじの種類や大きさ、材質などによって適切な値が異なります。 回転角締付け法の利点は、摩擦力の影響を小さくできることです。締付けトルクによる管理では、摩擦力が変わると締め付け具合も変わってしまいます。しかし、回転角締付け法では、摩擦力の変化は角度にはあまり影響しないため、常に同じ締め付け具合を達成できるのです。 この方法は、高い精度と信頼性が求められる自動車のエンジンなど、重要な部品の組み立てに多く用いられています。エンジンの内部では、高温高圧な環境で激しい動きが繰り返されます。ねじが少しでも緩むと、エンジンが壊れてしまうかもしれません。回転角締付け法を用いることで、ねじの締め付けをより正確に管理し、エンジンの性能と安全性を高めることができるのです。
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降伏点締め付け:高精度ボルト締結技術

締め付け部品には、ねじが使われることがよくあります。ねじの締め付け方の一つに、降伏点締め付けというものがあります。降伏点締め付けとは、ねじが伸び始める限界点を見極め、そこを基準に締め付ける方法です。 ねじを締め付けると、ねじには引っ張る力が加わります。この力を軸力と言います。ねじは、締め始めは伸び縮みする範囲で変形しますが、ある点を越えると、伸びたまま元に戻らなくなります。この伸び縮みする限界点を降伏点と言い、降伏点を超えた変形を塑性変形と言います。降伏点締め付けは、この塑性変形が始まる点を感知して締め付けを行います。 従来のねじの締め付け方は、どれだけねじを回したかを基準にしていました。しかし、ねじの座面やねじ山の摩擦力の影響で、同じ回転数でも軸力にばらつきが生じるという課題がありました。締め付けトルクが同じでも、摩擦が大きいと軸力は小さくなり、摩擦が小さいと軸力は大きくなります。この軸力のばらつきは、部品の強度や寿命に影響を及ぼす可能性がありました。 降伏点締め付けでは、ねじの降伏点を基準にするため、摩擦の影響を受けにくく、軸力のばらつきを大幅に小さくすることができます。摩擦が変化しても、降伏点は同じなので、常に一定の軸力で締め付けることが可能です。これにより、より正確で信頼性の高い締め付けを実現できます。 降伏点締め付けは、高い精度が求められる機械部品や、安全性が重要な自動車部品などで多く採用されています。部品の性能を最大限に発揮し、安全性を高める上で、重要な役割を果たしています。