マクファーソンストラット

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車の構造

乗り心地の秘密:オレオダンパー

飛行機が空から舞い降り、地面に触れる瞬間、大きな衝撃が発生します。この衝撃を和らげ、乗客が安心して着陸できるよう、様々な工夫が凝らされています。その一つが緩衝装置である「オレオダンパー」です。 オレオダンパーは、油と空気の力を巧みに利用した装置です。構造は比較的単純で、二本の筒が入れ子状に組み合わさっています。外側の筒の中に、少し細めの筒が入っている様子を想像してみてください。この二本の筒の間には油が満たされており、内側の筒には空気が閉じ込められています。 飛行機が着陸態勢に入り、車輪が滑走路に接地すると、機体の重みで車輪に大きな力が加わります。この力は、オレオダンパーの外側の筒を押し下げる力に変換されます。すると、筒の中の油が内側の筒にある小さな穴を通って移動を始めます。この油の通り道は非常に狭いため、油はゆっくりとしか移動できません。これが、急激な衝撃を和らげる最初の段階です。 同時に、内側の筒に閉じ込められた空気も重要な役割を果たします。外側の筒が押し下げられると、内側の筒の中の空気は圧縮されます。空気は圧縮されると、元の状態に戻ろうとする力、つまり反発力が生じます。この反発力が、衝撃を吸収する第二の段階となります。 このように、油の粘り気による抵抗と、空気の圧縮による反発力、この二つの力の組み合わせによって、着陸時の激しい衝撃は滑らかに吸収されます。まるで高度な職人技で作られた座布団のように、乗客に快適な着陸を提供する、重要な役割を担っているのです。
車の構造

操縦安定性の鍵、ストレートビームとは?

車を走らせる上で、路面の凸凹をうまく吸収し、タイヤを路面にしっかりと接地させることはとても大切です。この役割を担うのがサスペンションと呼ばれる装置です。サスペンションの性能次第で、乗り心地や運転のしやすさが大きく変わってきます。自動車メーカー各社は、より優れたサスペンションを開発するために、様々な技術を研究開発しています。 今回は、本田技研工業が開発したマクファーソンストラット式と呼ばれる、前輪のサスペンションに用いられる技術についてご紹介します。マクファーソンストラット式は、比較的簡素な構造でありながら、高い性能を発揮できるため、多くの車に採用されています。本田技研工業はこのマクファーソンストラット式に「真っ直ぐな梁」という、独自の構造を取り入れました。 「真っ直ぐな梁」とは、サスペンションを支える部品の一つである、ストラットの上部に溶接された部品の形状を工夫したものです。従来は曲がった形状が一般的でしたが、本田技研工業は真っ直ぐな形状にすることで、部品の強度を高め、かつ軽量化することに成功しました。部品が軽くなれば、車全体の重さも軽くなり、燃費の向上に繋がります。また、強度を高めることで、車体の安定性が増し、より正確な運転操作が可能になります。 この「真っ直ぐな梁」は、一見すると小さな改良のように思えますが、車の走行性能を向上させる上で非常に重要な役割を果たしています。本田技研工業の技術者は、細部にまでこだわり、より良い車を作るために日々努力を重ねています。今後も、このような革新的な技術が自動車業界で生まれてくることに期待が高まります。
駆動系

加速時の車体沈み込みを抑える技術

車を走らせる時、アクセルを踏むと速度が上がりますが、同時に車体後部が沈み込む現象が起きます。まるで人がしゃがむようなこの動きは、専門用語で「スクォト現象」と呼ばれています。この現象は、エンジンの回転力をタイヤに伝える際に発生する反作用によって引き起こされます。 車を前に進める力は、回転するタイヤが地面を蹴ることで生まれますが、その反作用として、車体は後方に押し付けられます。この力が、車体後部を沈み込ませる原因となるのです。このスクォト現象は、単に車体の姿勢が変わるだけでなく、様々な影響を及ぼします。まず、後輪への荷重が増加するため、前輪の荷重が減ってしまいます。すると、ハンドル操作への反応が鈍くなり、思い通りに車を操縦することが難しくなります。 また、タイヤが路面に接する面積や圧力も変化するため、路面をしっかりと捉えることができなくなり、滑りやすくなってしまいます。 特に雨天時や凍結路面などでは、この影響が顕著に現れ、危険な状況に陥る可能性も高まります。乗り心地も悪化し、後部座席の乗員は不快な揺れを感じてしまうでしょう。そこで、このスクォト現象を抑えるための様々な工夫が凝らされています。代表的なものがサスペンションの設計変更です。 サスペンションの取り付け角度や位置を調整することで、加速時の車体の沈み込みを最小限に抑えることができます。また、近年では電子制御技術を用いて、より高度な制御を行う車種も増えてきています。 これらの技術は、「アンチスクォト」と呼ばれ、車体の安定性向上に大きく貢献しています。アンチスクォトは、快適な乗り心地と安全な運転を実現するために、重要な役割を担っているのです。
車の構造

マクファーソンストラット式サスペンションの解説

マクファーソン式と呼ばれる、支柱一本で車輪を支える画期的な仕組みを持つ緩衝装置は、その名前の由来となったマクファーソン氏によって考案されました。この緩衝装置は、それまでの複雑な仕組みに比べて単純ながらも、高い性能を発揮しました。 1960年代に入ると、イギリスの自動車製造会社フォードとドイツの自動車製造会社べエムヴェーがこの画期的な仕組みにいち早く注目し、自社の車に取り入れ始めました。その後、1966年には日本の代表的な大衆車である初代カローラにも採用され、その優れた性能と製造のしやすさから、瞬く間に国内の自動車製造会社全体に広まりました。特に前輪を駆動する車においては、エンジンを置く場所の空間を有効に使えるという利点があり、多くの車種で採用されるようになりました。 当初は主に前の車輪に使われていましたが、その後、技術の進歩とともに後ろの車輪にも使われるようになりました。さらに、ただ衝撃を吸収するだけでなく、路面状況や車の状態に合わせて緩衝装置の硬さを自動で調整する技術や、コンピューター制御によってより精密な調整を行う技術など、様々な制御技術と組み合わせることで、より高度な性能を実現しています。 このように、マクファーソン式緩衝装置は時代に合わせて改良が加えられ、自動車の乗り心地や運転の安定性を向上させる上で、なくてはならないものとなっています。現在も進化を続けており、自動車技術の発展を支える重要な部品の一つと言えるでしょう。
車の構造

カーブドオフセットスプリングの秘密

{乗り物としての心地よさや、思い通りに操る楽しさをより高めるために、車は常に進化を続けています。}近年、様々な新しい技術が生まれていますが、その中でもばねの形や取り付け方に工夫を凝らした、新しい種類の巻きばねが注目を集めています。今回は、自動車メーカーであるダイハツ工業が開発した「曲がったずらした巻きばね」について、詳しく説明します。 車は、路面の凸凹をタイヤで受け止めますが、そのままだと振動が車内に伝わってしまいます。そこで、ばねを使って振動を吸収し、乗っている人に伝わる揺れを少なくしています。従来の巻きばねは、上下方向の振動を吸収するのが得意でしたが、左右方向の揺れや、車体の傾きを抑えることは苦手でした。 ダイハツが開発した「曲がったずらした巻きばね」は、その名の通り、ばね自体が曲がっているのが特徴です。さらに、車体に取り付ける位置も、中心からずれています。これらの工夫により、上下方向の振動吸収はもちろんのこと、左右方向の揺れや車体の傾きも効果的に抑えることができるようになりました。 この技術によって、乗っている人は、より快適に、そして運転する人は、より安定した走りを楽しむことができます。例えば、カーブを曲がるときに車体が傾きにくくなるため、より安定した姿勢で運転できます。また、路面の凸凹を乗り越えるときも、不快な揺れが少なく、滑らかな乗り心地を実現できます。 「曲がったずらした巻きばね」は、小さな軽自動車にも搭載できるため、幅広い車種で快適性と操縦安定性の向上が期待できます。この技術は、今後の自動車開発において、重要な役割を果たしていくでしょう。より快適で、より安全な車社会の実現に向けて、技術革新はこれからも続いていきます。
機能

快適な乗り心地を実現する部品

車は、多くの部品が組み合わさって動いています。それぞれの部品がそれぞれの役割を担うことで、快適な運転を実現しています。今回は、乗り心地を良くする部品の一つである「振動止め」について詳しく説明します。振動止めは、道から伝わる振動を吸収し、車内に伝わるのを抑える働きをしています。 車が道を走る時、道の凸凹や段差によってタイヤやばねは激しく上下に動きます。この動きによって生まれる振動がそのまま車体に伝わると、車内は不快な揺れや騒音でいっぱいになってしまいます。振動止めは、この振動を効果的に吸収することで、車内を快適に保つ重要な役割を担っています。 振動止めは、様々な種類があり、設置場所も様々です。例えば、エンジンと車体の間や、サスペンションと車体の間など、振動が発生しやすい場所に設置されます。材質もゴムや金属など、様々なものが使われています。 振動を吸収する仕組みは、振動止めの材質の持つ特性を利用しています。ゴム製の振動止めは、ゴムの弾力性によって振動のエネルギーを吸収します。金属製の振動止めは、金属の内部摩擦によって振動のエネルギーを熱に変換し、吸収します。 近年、車の静かさに対する要求はますます高まっています。そのため、振動止めの役割はこれまで以上に重要になっています。より効果的に振動を吸収できる新しい振動止めの開発も進められています。静かで快適な車内空間を実現するために、振動止めはなくてはならない部品と言えるでしょう。