滑らかな後進ギア:リバースシンクロ
車を後ろへ動かすためには、エンジンの回転を逆方向にタイヤへ伝える必要があります。これを可能にするのが後進ギアの仕組みです。普段、前に進む際に使われている前進ギアでは、エンジンの回転はそのままタイヤに伝わり、車は前へ進みます。しかし、後進時は、エンジンの回転を反対向きに変換する特別な仕組みが必要です。
この仕組みの核となるのが、「リバースアイドラーギア」と呼ばれる歯車です。前進ギアでは、エンジンの回転を伝えるための歯車が噛み合って動力を伝えますが、後進ギアに入れると、このリバースアイドラーギアが入力軸と出力軸の間に割り込みます。この3つ目の歯車が加わることで回転方向が逆転し、エンジンの回転は反対向きにタイヤへと伝わり、車が後ろへ進むことができるのです。
多くの手動変速機車、つまりマニュアル車では、後進ギアへ入れる際に一度車を完全に停止させる必要があります。これは、リバースアイドラーギアを他の歯車に噛み合わせる際に、回転していると歯車がうまく噛み合わず、破損してしまう可能性があるためです。前進ギアのように、回転しながらスムーズに噛み合うような構造にはなっていないのです。静止した状態で、後進ギア専用の溝にレバーをゆっくりと押し込むことで、リバースアイドラーギアが噛み合い、後進が可能になります。力任せに操作すると、歯車を傷つけてしまう恐れがあるので、丁寧な操作を心がけることが大切です。
このように、後進ギアはリバースアイドラーギアを用いることで、エンジンの回転を逆転させて後進を可能にしています。少し複雑な仕組みですが、この仕組みのおかげで、狭い場所での切り返しや駐車など、様々な場面で車をスムーズに動かすことができるのです。