ホイールレート:車の乗り心地を決める隠れた要素
乗り物の快適さや、思い通りに操る感覚を左右する要素として、ばねは欠かせない部品です。ただ、ばねの硬さだけで乗り心地や操縦性が決まるわけではありません。様々な部品が複雑に影響し合い、全体のばねの特性を作り出しています。この全体像を捉えるために「車輪荷重比」という考え方が用いられます。
車輪荷重比とは、タイヤが地面と接する点に、仮のばねがあると想定し、そのばねの硬さで全体のばねの特性を表現したものです。つまり、車体と車軸をつなぐ主なばねだけでなく、車の姿勢を制御するための補助的なばねや、部品同士をつなぐゴム部分のばねとしての性質など、車全体のあらゆるばねの要素をまとめて考えた値です。
例えば、同じ硬さの主ばねを使っていても、補助ばねの種類や取り付け位置、ゴム部分の硬さなどが変われば、車輪荷重比も変化します。車輪荷重比が大きければ、地面からの衝撃を伝えにくく、乗り心地は硬くなりますが、車体の傾きが少なく、安定した操縦性となります。反対に、車輪荷重比が小さければ、地面からの衝撃を吸収しやすく、乗り心地は柔らかくなりますが、車体の傾きが大きくなり、操縦性は不安定になりがちです。
このように、車輪荷重比は、様々なばね要素の影響を総合的に評価した値であるため、車の動きをより深く理解する上で非常に重要です。この値を理解することで、乗り心地と操縦性のバランスをどのように調整すればよいか、より的確に判断できるようになります。それぞれの車種に合わせた最適なばね特性を設計するために、車輪荷重比は欠かせない指標となっています。