車のエンジン:アンダースクエア型
四角い箱を想像してみてください。その箱の縦の長さが、横の長さよりも長いとしましょう。ちょうどそんな箱のような形をしているのが、細長い筒型のエンジンです。このエンジンは、筒の中でピストンと呼ばれる部品が上下に動いて力を生み出します。ピストンの動く距離のことを「行程」、筒の直径のことを「穴の大きさ」と呼びます。行程が穴の大きさよりも長いエンジンは、「行程が長いエンジン」と呼ばれます。
行程が長いエンジンは、いくつかの特徴を持っています。まず、低い回転数でも大きな力を出すことができます。これは、ピストンが長い距離を動くことで、より多くの燃料と空気を燃焼させることができるからです。まるで、長い棒を大きく振れば、短い棒よりも大きな力を生み出せるのと同じです。このため、行程が長いエンジンは、大きな荷物を積んだトラックや、力強い走りが求められるスポーツカーなどに適しています。
次に、行程が長いエンジンは、燃料を効率的に使うことができます。低い回転数で大きな力を出せるため、エンジンの回転数を抑えて走ることができます。回転数が低いほど燃料の消費量は少なくなるため、燃費が良くなります。
一方で、行程が長いエンジンは、高い回転数を得意としていません。ピストンが長い距離を動くため、どうしても動きが遅くなってしまいます。これは、長い棒を速く振るのが難しいのと同じです。このため、高い回転数を必要とするレースカーなどには、あまり適していません。
さらに、行程が長いエンジンは、エンジン全体の高さが高くなる傾向があります。これは、ピストンが長い距離を動くために、エンジン自体を高く設計する必要があるからです。このため、エンジンの搭載位置や車全体の設計にも影響を与えます。
このように、行程が長いエンジンは、力強さと燃費の良さという長所を持つ反面、高い回転数への対応が難しいという短所も持っています。車の用途や求められる性能によって、エンジンの種類を選ぶことが大切です。