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アスベストを使わないブレーキ:安全な車社会に向けて

車は、走る、曲がる、止まるという三つの基本動作が不可欠です。安全に止まるためには、ブレーキパッドが重要な役割を果たしています。ブレーキパッドは、摩擦材を金属板に接着したもので、ブレーキペダルを踏むことで回転するディスクやドラムに押し付けられ、その摩擦によって車の運動エネルギーを熱エネルギーに変換し、速度を落とします。 かつて、このブレーキパッドの材料として、アスベストという鉱物が広く使われていました。アスベストは、繊維状の鉱物で、熱に強く、摩耗しにくいという特性を持っていました。そのため、ブレーキパッドだけでなく、建材など様々な用途に利用されていました。しかし、後にアスベストが人体に深刻な健康被害をもたらすことが明らかになりました。アスベストの細かい繊維を吸い込むと、肺の中に蓄積し、長い年月を経て肺がんや中皮腫といった重い病気を引き起こす可能性があるのです。 このアスベストの危険性が認識されるようになると、世界中でアスベストの使用を制限する動きが加速しました。日本では、2004年には建材へのアスベストの使用が原則禁止となり、2006年にはブレーキパッドを含む全ての製品へのアスベストの使用が禁止されました。現在では、アスベストに代わる安全な素材がブレーキパッドに使用されています。例えば、ノンアスベスト有機材、金属材、セラミック材などがあり、それぞれに特徴があります。ノンアスベスト有機材は、静かでブレーキの効きも安定していますが、摩耗しやすく、ブレーキダストが発生しやすいという欠点があります。金属材は、耐久性が高く、高温時でも安定した制動力を発揮しますが、ブレーキ音が大きく、ローターへの攻撃性も高いというデメリットがあります。セラミック材は、耐熱性、耐久性に優れ、ブレーキダストも少ないという優れた特性を持っていますが、価格が高いという点が課題です。このように、ブレーキパッドの素材は安全性と性能の両立が求められており、日々改良が続けられています。