切削

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工具の秘密:バックテーパー

物を貫通する穴を開ける作業は、様々な製造現場で見られます。この穴あけ加工には、回転しながら材料に食い込んでいく錐のような道具が使われます。この道具と材料が擦れ合うことで熱が発生しますが、この熱は道具の寿命を縮めたり、仕上がりの精度を悪くしたりする困ったものです。 そこで、道具の工夫が必要になります。よく見ると、穴を開ける道具の先端から持ち手に向かって、少しずつ外径が細くなっていることに気が付きます。このわずかな傾斜を「逃がし勾配」と呼びます。逃がし勾配があることで、道具と穴の内壁が触れ合う面積が小さくなり、発生する熱を抑えることができるのです。 特に深い穴を開ける場合は、この逃がし勾配の効果が大きく現れます。深い穴を開ける作業では、道具が穴の中で曲がってしまったり、熱で溶けてくっついてしまったりする危険性があります。逃がし勾配はこれらのトラブルを防ぎ、安定した作業を続ける上で重要な役割を果たします。 逃がし勾配は一見すると小さな工夫ですが、道具の性能や作業効率に大きな影響を与える重要な要素です。逃がし勾配によって熱の発生を抑え、道具の寿命を延ばし、より精度の高い穴あけ加工を実現することが可能になります。製造現場では、このような小さな工夫の積み重ねが、高品質な製品を生み出すことに繋がっているのです。
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車の製造におけるNC加工の役割

車を作る工程では、まず設計図が必要です。最近は、コンピューターを使って設計図を描くことが当たり前になっています。画面の上で、様々な部品の形や大きさ、配置などを細かく決めていきます。このコンピューターで描いた設計図をもとに、実際に部品を作る工程に移ります。 コンピューターで設計しただけでは、部品はただのデータに過ぎません。そこで登場するのが、数値制御された工作機械です。この機械は、コンピューターからの指示通りに材料を削ったり、穴を開けたりすることで部品の形を作っていきます。材料は金属の塊であることが多いですが、指示通りに削っていくことで、複雑な形をした部品も作ることができます。まるで魔法のように、設計図どおりの形が目の前に現れる様子は、見ていて感動的です。 この工作機械の精度は非常に高く、設計図と全く同じ形を作り出すことができます。ほんの少しのずれも許されません。例えば、エンジンの中の部品は非常に精密な動きが求められます。少しでも形がずれていると、エンジンがうまく動かないばかりか、壊れてしまうこともあります。ですから、正確な部品作りは車の性能や安全性を保つ上で非常に重要なのです。 このように、コンピューターで描いた設計図と、それを現実のものにする工作機械の技術によって、様々な部品が作られ、それらが組み合わされて一台の車が完成します。技術の進歩により、より複雑で高性能な部品を、より速く正確に作ることができるようになりました。今後も技術革新は続き、車の性能向上に貢献していくことでしょう。
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門型加工機:車の製造に革命を起こす

門型加工機は、その名が示す通り、門のような形をした大きな工作機械です。左右に高く伸びた支柱の上に、橋のように横梁が渡されています。この横梁には、材料を削るための工具が取り付けられており、加工したい材料を固定した台の上を横梁が移動することで、切削作業が行われます。 この機械の一番の特徴は、その大きさです。普通の工作機械よりもずっと大きく、大きな部品を加工できることが大きな利点です。特に車を作る工場では、車体の部品のような大きな部品を加工するために、門型加工機は欠かせない存在となっています。 例えば、車の骨格となる部品や、ドア、ボンネットなど、様々な部品がこの機械で作られています。これらの部品は、高い強度と精度が求められるため、門型加工機の高い加工能力が不可欠です。 また、近年は電気で動く車が増えてきており、その電池を収めるケースなども門型加工機で作られています。これらのケースは、複雑な形状をしている上に、高い寸法精度が求められます。門型加工機は、このような高度な要求にも応えることができる、最先端の工作機械と言えるでしょう。 大きな部品を高い精度で加工するためには、機械全体の構造もしっかりとしていなければなりません。門型加工機は、頑丈な構造と、最新の制御技術によって、微細な加工にも対応できるようになっています。 このように、門型加工機は、様々な産業で活躍する、なくてはならない機械となっています。特に、車を作る工場では、その重要性はますます高まっていくでしょう。
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片持ち式工作機械:車体製造の革新

片持ち式工作機械は、まるで大きな鳥が羽根を片方だけ広げたような形をしています。この機械は、片側だけに支柱となる梁(はり)があるのが特徴で、この梁から工具が伸びて加工を行います。自動車の車体のように大きなものを加工する場合、従来の機械では車体全体を囲むように大きな装置が必要でした。そのため、工場の場所も広く取られる上に、機械の値段も高くなってしまう問題がありました。しかし、この片持ち式工作機械は、片側から工具を伸ばして加工するため、機械全体を小さく作ることができます。そのため、工場の場所も広く取らず、値段も抑えることができます。大きな車体を加工する場合でも、片側ずつ順番に加工していくことで、大きな機械を使わずに済むのです。また、この機械は、片側の梁で支える構造のため、加工中に振動が起こりやすいという問題がありました。しかし、梁の強度や形状を工夫することで振動を抑え、高い精度で加工できるようになりました。さらに、機械全体を頑丈な土台の上に固定することで、振動や衝撃を吸収し、より正確な加工ができるようになっています。この土台には、機械を固定するためのボルト穴や、電気の配線や空気や油を送るための管を通す溝などが作られています。これらの工夫により、片持ち式工作機械は、高精度で効率的な車体製造を可能にしているのです。まるで職人のように正確に、そして無駄なく車体を作ることができる、そんな機械です。
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切削工具のすくい角:性能への影響

物を削る道具の刃には、削る物の流れを良くするための角度が付けられています。これを「すくい角」と言います。この角度は、削る道具の面と、削る方向に垂直な面との間の角度で決まります。この角度が、削り作業の出来栄えに大きな影響を与えます。 すくい角には、主に二つの種類があります。一つは、刃が前方に傾いている「正のすくい角」です。もう一つは、刃が後方に傾いている「負のすくい角」です。それぞれに異なる特徴があり、用途によって使い分けられます。 正のすくい角は、削りかすをスムーズに排出する効果があります。そのため、道具にかかる負担が少なく、滑らかに削ることができます。また、削られた面の仕上がりも美しくなります。このため、粘り気のある柔らかい物を削る時や、綺麗な仕上がりを求める時に適しています。木材やプラスチックなどを削る道具によく用いられます。 一方、負のすくい角は、刃の先端が強くなります。摩耗しにくく、硬い物を削るのに適しています。しかし、削りかすの排出はあまり良くなく、削る際に大きな力が必要になります。また、削られた面の仕上がりもあまり良くありません。このため、硬い金属などを削る道具によく用いられます。 適切なすくい角を選ぶことは、良い削り作業をするために非常に重要です。削る物、求める仕上がり、道具の強度など、様々な条件を考慮して最適なすくい角を選びましょう。例えば、粘りのある柔らかい物を削る場合は正のすくい角、硬い物を削る場合は負のすくい角を選びます。また、仕上がりの美しさを求める場合は正のすくい角、道具の寿命を重視する場合は負のすくい角を選びます。このように、状況に応じて最適なすくい角を使い分けることで、作業効率を高め、高品質な製品を作り出すことができます。
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切削工具の寿命を延ばすエンゲージ角

回転刃物、いわゆるフライスカッターで工作物を削る際に、刃物が最初に材料に触れる角度のことを食付き角と言います。 もう少し詳しく説明すると、回転するフライスカッターの中心点と、刃が材料に初めて触れる点、この二点を線で結びます。そして、工作物の端面、つまり削られる面の始まりと、先ほど結んだ線が作る角度が食付き角です。 この食付き角は、削る作業の効率や刃物の寿命に大きく関わってきます。適切な角度であれば、刃物は滑らかに材料を削ることができ、摩耗も抑えられます。まるで包丁で野菜を切るように、最適な角度で刃を入れれば少ない力で切ることができますし、刃こぼれも防げます。 逆に、食付き角が不適切だと、刃物が欠けたり、削り面にムラができたりすることがあります。これは、無理な角度で包丁を使った際に、刃が曲がったり、食材が潰れてしまうのと似ています。 食付き角の適切な値は、工作物の材質や形状、使用するフライスカッターの種類、更には削る速度など、様々な条件によって変化します。硬い材料を削る場合は小さい食付き角が、柔らかい材料を削る場合は大きい食付き角が適していることが多いです。また、同じ材質でも、大きな切込み量で削る場合は小さい食付き角が、小さな切込み量で削る場合は大きい食付き角が適しています。 そのため、作業内容に最適な食付き角を選ぶことが、高品質な加工を行う上で非常に重要になります。経験豊富な職人は、長年の経験と勘で最適な食付き角を見極めますが、最近ではコンピューターを使ったシミュレーションで最適な値を計算することも可能です。適切な食付き角は、加工の仕上がりと効率を大きく左右する重要な要素と言えるでしょう。