ダイナミックダンパー:振動を制する技術
乗り心地の良さや静けさは、車を作る上でとても大切なことです。路面のでこぼこやエンジンなどが起こす振動は、車全体に伝わり、不快な揺れや騒音の原因となります。この揺れや騒音を抑えるために、様々な工夫が凝らされていますが、その一つに動的吸振器、いわゆる動的抑制装置があります。動的抑制装置は、特定の揺れの周波数だけを吸収する装置です。
車は様々な部品の組み合わせでできており、それぞれの部品が固有の振動数を持っています。エンジン回転数や路面からの入力など、様々な振動が車体に伝わると、特定の部品が共振し、大きな揺れや騒音を発生させることがあります。動的抑制装置は、共振しやすい部品の振動数に合わせて設計されます。この装置は、おもりのついたバネで構成されており、狙った振動数と反対の動きをすることで、振動を打ち消す働きをします。
例えば、エンジンの振動によって特定の部品が共振し、不快な騒音が発生しているとします。この場合、エンジンの振動数に合わせて設計された動的抑制装置を取り付けることで、共振を抑え、騒音を小さくすることができます。また、路面のでこぼこによって車体が揺れる場合にも、動的抑制装置は効果を発揮します。車体の揺れに合わせて動的抑制装置が作動し、揺れを吸収することで、乗員が感じる振動を少なくするのです。
このように、動的抑制装置は車全体の揺れを効果的に抑え、乗り心地を良くし、車内を静かにする上で、重要な役割を果たしています。部品の摩耗や損傷を防ぎ、車の寿命を延ばす効果も期待できます。動的抑制装置は車だけでなく、橋や建物など、揺れを抑える必要がある様々な構造物で広く使われています。