五感を研ぎ澄ませ!実車官能試験の世界
車は、ただ走るだけの機械ではありません。人が運転し、人が乗ることで初めてその価値が生まれる乗り物です。そのため、車の開発には様々な試験がありますが、人の五感を用いた官能試験は特に重要です。官能試験とは、機械では測れない、人の感覚を頼りに品質を評価する試験のことです。目で見て、耳で聞いて、手で触って、鼻で嗅いで、場合によっては舌で味わって、製品の良し悪しを判断します。
車づくりにおいて、この官能試験は様々な場面で活躍します。例えば、運転席に座った時のシートの感触、ハンドルを握った時の重さや感触、アクセルペダルを踏んだ時の抵抗感などは、人の感覚でしか測れません。ドアを閉めた時の音、エンジンをかけた時の音、走行中のロードノイズなども、機械で周波数を測るだけでなく、人がどう感じるかが大切です。また、新車の香りやエアコンの風、車内の素材の質感なども、官能試験で評価されます。これらの感覚的な情報は、数値化することが難しいため、熟練した評価員の五感が頼りとなります。
官能試験は、車の開発の初期段階から最終段階まで、様々な場面で行われます。初期段階では、試作車の設計段階で、ハンドルやペダルの操作感、シートの座り心地などを評価し、設計変更に役立てます。開発の最終段階では、完成車に試乗し、乗り心地や静粛性、操作性などを確認します。官能試験によって得られた情報は、より人に優しい、快適な車を作るために欠かせないものです。機械では測れない人の感覚を大切にすることで、初めて本当に良い車が出来上がると言えるでしょう。