静かな車の作り方:パワープラントベンディングを抑える
車が走行中に発生する音は、心地よいものと不快なものに分けられます。心地よい音は、機械が精密に動いている様子を表し、運転する喜びを高めてくれます。しかし、不快な音は、同乗者にとって負担となり、長時間の運転で疲れをため込む原因になります。このような不快な音の一つに「こもり音」があります。この音は、エンジンの回る速さや道路の状態によって変化します。こもり音の原因の一つに「動力装置のゆがみ」という現象があります。動力装置とは、エンジンと変速機、そしてそれらを繋ぐ部品全体を指します。これらの部品は、ボルトでしっかりと固定されていますが、完全に一体化しているわけではありません。そのため、走行中の振動によって、わずかに曲がったり、ねじれたりする動きが発生します。これが動力装置のゆがみです。この現象は、木の枝がしなるように、動力装置全体が振動することで起こります。この振動が車体に伝わり、不快なこもり音として車内に響くのです。動力装置を構成する部品は、それぞれ固有の振動しやすい回数(固有振動数)を持っています。エンジンの回転数が上がり、特定の振動数に達すると、共振と呼ばれる現象が発生します。共振とは、外部からの振動と物体の固有振動数が一致した時に、振動の幅が大きくなる現象です。この共振によって動力装置のゆがみが大きくなり、より強いこもり音となって車内に響きます。こもり音を抑えるためには、動力装置のゆがみを最小限に抑える必要があります。そのために、車体や動力装置の設計段階で、振動を吸収する材料や構造を採用することが重要です。また、動力装置の取り付け方法を工夫することで、振動の伝達を抑制することも効果的です。静かで快適な車内空間を実現するためには、このような様々な工夫が凝らされているのです。