排ガス対策

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エンジン

バキュームリミッター:懐かしい排ガス対策装置

車の進む力を出す装置、つまり原動機は、燃料を燃やすことで動いています。燃料が燃える時には、どうしても排気ガスが出てしまいます。昔は、この排気ガスの中に有害なものがたくさん含まれていました。そこで、排気ガスをきれいにするための様々な工夫がされてきました。その初期の工夫の一つに「負圧制限装置」というものがあります。この装置は、原動機が空気を吸い込む力を利用して、燃料を送り込む量を調整する仕組みです。 原動機の中には、空気と燃料を混ぜて燃やす部屋があります。この部屋に送り込む空気の量は、アクセルペダルを踏む量で変わります。アクセルペダルをたくさん踏むと、空気の吸い込む量が増え、それに合わせて燃料もたくさん送り込まれ、大きな力が生まれます。負圧制限装置は、この空気の吸い込む力の変化を利用しています。 アクセルペダルを少ししか踏んでいない時は、空気の吸い込む力は弱く、負圧が大きくなります。この大きな負圧を利用して、燃料を送り込む量を少なくすることで、排気ガスを減らすのです。逆に、アクセルペダルを深く踏んで、大きな力を出したい時は、空気の吸い込む力が強くなり、負圧は小さくなります。負圧が小さくなると、燃料を送り込む量への制限が弱まり、必要な分の燃料が送り込まれるようになります。 負圧制限装置は、構造が単純で、特別な部品を使わずに作ることができるという利点がありました。そのため、排気ガス対策の初期段階では、多くの車にこの装置が使われていました。しかし、この装置だけでは排気ガスを十分にきれいにすることができませんでした。のちに、電子制御の技術が発達するにつれて、より精密に燃料の量や燃焼状態を調整できる装置が登場し、負圧制限装置は使われなくなっていきました。今では、ほとんど見かけることはありませんが、負圧制限装置は、当時の技術者が限られた技術の中で、排気ガス対策に取り組んでいた証と言えるでしょう。
規制

クルマの進化を支える法規対策

車は人々の暮らしを豊かにする一方で、事故による危険もはらんでいます。だからこそ、安全を守る技術の進歩は、車の発展において最も重要な要素の一つと言えるでしょう。安全技術は、事故を未然に防ぐ「予防安全」と、事故発生時の被害を軽減する「衝突安全」の二つの側面から進化を続けてきました。 まず予防安全の面を見てみましょう。1951年に定められた保安基準は、安全技術発展の礎となりました。自動車の普及が急速に進むにつれて、より厳しい安全基準が求められるようになり、メーカー各社は技術開発にしのぎを削ってきました。例えば、急ブレーキ時にタイヤがロックしてハンドル操作が効かなくなるのを防ぐ装置(アンチロック・ブレーキ・システム)は、今では多くの車に標準装備されています。この装置のおかげで、ブレーキを強く踏んでもハンドル操作で危険を回避できるようになりました。また、路面の状況に合わせて四輪への駆動力を自動的に調整する電子制御式の四輪駆動装置も、滑りやすい路面での走行安定性を高め、事故防止に貢献しています。さらに、霧などで視界が悪い時に、後続車に自車の存在を知らせる後方霧灯も、追突事故の防止に役立っています。 衝突安全の技術もまた、たゆまぬ努力によって進歩してきました。頑丈な車体構造は、衝突時の乗員への衝撃を最小限に抑えるために非常に重要です。高強度鋼板や衝撃吸収材を効果的に配置することで、車体の強度を高めつつ、衝撃を効果的に分散・吸収できるようになりました。また、シートベルトは、衝突時に乗員が車外に放り出されることや車内で激しくぶつかることを防ぐ、最も基本的な安全装置です。エアバッグは、衝突時に瞬時に膨らんで乗員の頭部や胸部への衝撃を和らげ、深刻なケガを防ぎます。これらの技術は、事故発生時の被害を大きく軽減する役割を果たしています。安全技術の進歩は、様々な装置の開発だけでなく、交通環境の整備や運転者への安全教育、そして法整備など、多方面からのアプローチによって実現されています。これからも技術革新と意識向上により、より安全な車社会が実現していくことでしょう。
エンジン

燃費向上を実現する燃料遮断弁

燃料遮断弁は、燃費向上と円滑な始動に欠かせない重要な部品です。文字通り、燃料の通り道を遮断する弁で、主にキャブレターと呼ばれる燃料供給装置に組み込まれています。キャブレターは、空気と燃料を適切な割合で混ぜ合わせる装置ですが、この燃料遮断弁が燃料の供給を的確に制御することで、無駄な燃料消費を抑えています。 具体的には、車が惰性走行している時、つまりエンジン回転数が一定以上でアクセルペダルから足を離した時に、この弁が活躍します。電磁石の力で弁が閉じ、燃料の通り道を遮断するのです。これにより、エンジンに燃料が供給されなくなり、惰性走行中の燃料消費をなくすことができます。この機能は、燃費向上に大きく貢献しています。 また、エンジンを停止する際にも、燃料遮断弁は重要な役割を果たします。エンジン停止時に燃料供給を遮断することで、余分な燃料がエンジン内に残留することを防ぎ、再始動時のスムーズなエンジン始動を助けます。燃料が溜まりすぎると、再始動時にエンジンがかかりにくくなることがあるため、この機能はエンジンの状態維持にも役立ちます。 このように、小さな部品ながらも燃料遮断弁は、燃費向上とエンジンの円滑な始動という二つの大きな役割を担っているのです。燃料費節約や快適な運転のためにも、燃料遮断弁の状態を定期的に確認し、適切なメンテナンスを行うことが大切です。
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急速燃焼:エンジンの進化

車の心臓部であるエンジンは、燃料を燃やして力を生み出します。この燃料が燃える速さ、つまり燃焼速度は、エンジンの働きに大きく関わっています。 燃焼速度が速いと、短い時間でたくさんの熱エネルギーが生まれます。これは、エンジンの力を高め、車を勢いよく走らせることに繋がります。まるで短距離走の選手のように、瞬発力が高い状態です。しかし、あまりにも燃焼速度が速すぎると、エンジン内部の温度と圧力が急に上がりすぎて、エンジンに負担がかかってしまいます。 これは、まるで風船に急にたくさんの空気を入れすぎると破裂してしまうようなものです。エンジンも同様に、高い温度と圧力に耐えきれず、故障の原因となることがあります。さらに、燃焼速度が速すぎると、排気ガス中に有害な物質が増えてしまうという問題も発生します。 反対に、燃焼速度が遅すぎるとどうなるでしょうか。燃焼速度が遅いと、せっかくの燃料が全て燃え切らずに、エネルギーを十分に取り出すことができません。これは燃費の悪化に繋がります。まるで長距離走の選手がゆっくり走りすぎて、ゴールまでたどり着けないようなものです。 そのため、エンジンの性能を最大限に引き出すためには、燃焼速度を適切に調整することが重要となります。ちょうど良い速さで燃料を燃やすことで、力強く、燃費も良く、そして環境にも優しいエンジンを作ることができるのです。まるでマラソン選手のように、速すぎず遅すぎず、一定のペースを保って走り続けることが大切です。 自動車メーカーは、様々な技術を駆使して、この理想的な燃焼速度を実現しようと日々研究開発に取り組んでいます。その結果、燃費が良く、力強い、そして環境にも配慮した、より良い車が作られているのです。