排気ガス試験

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車の開発

燃費計測の鍵、コーストダウン試験

滑らかな走行は、快適な運転だけでなく燃費にも大きく影響します。この滑らかさを測る方法の一つに、コーストダウン試験があります。コーストダウン試験とは、平坦な試験路で一定の速度まで加速した後、エンジンを切り、ブレーキも踏まずにクルマが自然に減速していく様子を観察する試験です。まるで静かな水面に小石を投げ入れた後、波紋が広がりやがて消えていくように、クルマは徐々に速度を落としていきます。この減速にかかる時間や距離を計測することで、クルマの走行抵抗を数値化することができます。 走行抵抗とは、クルマの動きを妨げる力の総称です。タイヤと路面の摩擦や、空気との摩擦、そして車軸の回転部分における摩擦などがこれに含まれます。これらの抵抗が大きいほど、クルマは早く減速します。逆に抵抗が小さければ、より長い時間をかけてゆっくりと減速します。コーストダウン試験では、減速の度合いを計測することで、これらの見えない抵抗の大きさを間接的に測ることができるのです。これは、まるで風の抵抗や路面の摩擦といった見えない力を測る、特殊なはかりのようなものです。 この試験は燃費計測において非常に重要な役割を果たします。なぜなら燃費はエンジンの性能だけでなく、タイヤの摩擦や空気抵抗といった走行抵抗にも大きく左右されるからです。これらの抵抗が大きければ、エンジンはより多くの力を使ってクルマを動かさなければならず、結果として燃費が悪化します。コーストダウン試験によって走行抵抗を正確に把握することで、燃費性能をより精密に評価することが可能になります。また、新型車の開発段階においても、この試験は大きな役割を果たします。設計の段階で走行抵抗を小さくするように工夫することで、より燃費の良いクルマを作ることができるのです。