停止時のハンドル操作:据切り操舵力
車は、止まっている状態からハンドルを回す時に、ある程度の力が必要です。この必要な力のことを据切り操舵力と言います。日々の運転で、車を停めてからハンドルを切る時、例えば駐車場での切り返しや、道の端に車を寄せる時など、ハンドルが重く感じることがあるでしょう。これは、据切り操舵力が大きくなっている状態です。
では、なぜハンドルが重くなるのでしょうか。まず大きな要因の一つに、タイヤと路面との摩擦が挙げられます。タイヤが路面をしっかりと掴んでいる状態では、ハンドルを回す際に、その摩擦に打ち勝つだけの力が必要になります。路面の状態が滑りやすい時よりも、乾燥している時の方が、据切り操舵力は大きくなります。次に、ハンドルの機構も関係してきます。パワーステアリングが付いていない車や、パワーステアリングの効きが悪い車では、ハンドル操作に大きな力が必要になります。パワーステアリングは、油圧や電動モーターの力を利用して、ハンドル操作を補助する仕組みです。
さらに、タイヤの空気圧も据切り操舵力に影響を与えます。空気圧が低いと、タイヤの接地面積が増え、路面との摩擦が大きくなるため、ハンドルが重くなります。反対に、空気圧が高いと、ハンドルは軽くなりますが、路面との接地面積が減り、グリップ力が低下する可能性があります。その他にも、車体の重さや、サスペンションの状態、前輪の角度なども、据切り操舵力に関係してきます。これらの要素が複雑に組み合わさって、据切り操舵力の大きさが決まります。
据切り操舵力が適切な範囲に収まっていると、スムーズなハンドル操作が可能になります。適切な範囲とは、運転手が無理なくハンドルを回せる程度の重さです。重すぎるとハンドル操作が大変になり、軽すぎるとハンドルがふらついて安定した運転が難しくなります。そのため、車の設計段階では、これらの要素を考慮し、据切り操舵力が適切な範囲になるよう調整されています。