未来の車を創る官民連携
今から30年ほど前、車が社会にもたらす様々な問題が深刻化し始めました。交通事故による死傷者の増加は人々の暮らしに影を落とし、道路の混雑は経済活動を停滞させ、排気ガスによる大気汚染は環境を悪化させていました。これらの複雑に絡み合った問題を解決するには、各省庁がそれぞれの立場や権限にとらわれず、協力して取り組む必要があったのです。
そこで、交通に関わる5つの省庁、すなわち、安全を守る警察庁、産業を振興する通商産業省、輸送を担う運輸省、通信技術を管轄する郵政省、道路整備を行う建設省が集結しました。それぞれの省庁が、まるで車の部品のように異なる役割を担い、一つにまとまることで大きな力を発揮できると考えたのです。こうして、5省庁連絡会議という話し合いの場が設けられました。
この会議は、各省庁の情報共有と政策連携を目的としていました。交通事故の発生状況や道路の混雑状況、自動車の排気ガスによる大気汚染のデータなど、各省庁が独自に集めた情報を持ち寄り、互いに提供し合うことで、より正確で全体的な状況把握が可能になります。また、各省庁が別々に政策を進めるのではなく、連絡会議で調整することで、無駄な重複や矛盾を避け、効率的で効果的な政策の実施を目指しました。未来の交通システムの実現に向けた第一歩として、5つの省庁は技術や知識を持ち寄り、知恵を出し合い、熱い議論を交わしました。それはまるで、多くの部品を組み合わせて一台の車を作り上げるように、未来の交通の姿を描き出す作業でした。