車の性能向上に貢献するトライボロジー
摩擦とは、物が触れ合って動こうとするときに、その動きを邪魔する力のことを指します。まるで、見えない手で押さえつけられているかのように、動きにくくなります。この力は、触れ合う面の粗さによって大きく変わります。ザラザラした面同士では摩擦は大きく、ツルツルした面同士では摩擦は小さくなります。
自動車を例に挙げると、タイヤと道路の間の摩擦は非常に重要です。車が動き出すとき、タイヤが道路を後ろに蹴ろうとする力と、道路がタイヤを前に押し戻そうとする摩擦力が働きます。この摩擦力のおかげで、車は前に進むことができます。もし摩擦が全く無ければ、タイヤは空回りするだけで、車は前に進めません。ブレーキを踏んで車を止める際にも、タイヤと道路の間の摩擦が重要な役割を果たします。ブレーキを踏むと、タイヤの回転が遅くなり、道路との摩擦によって車が停止します。
カーブを曲がるときも、摩擦力が欠かせません。タイヤと道路の間の摩擦があるおかげで、車はカーブの外側に飛び出さずに曲がることができます。もし摩擦が無ければ、車は直進してしまい、カーブを曲がることができません。
しかし、摩擦は良いことばかりではありません。摩擦は熱エネルギーに変換され、エネルギーの損失につながります。自動車の場合、摩擦によってエネルギーが失われると、燃費が悪くなります。そのため、自動車の設計では、必要な摩擦は確保しつつ、無駄な摩擦を減らす工夫が凝らされています。例えば、タイヤのゴムの素材や道路の舗装方法などは、摩擦を調整するために細かく設計されています。また、エンジン内部の部品同士の間でも摩擦が生じます。この摩擦を減らすために、潤滑油が使われています。潤滑油は、部品同士の間に薄い膜を作り、部品同士が直接触れ合わないようにすることで、摩擦を小さくします。このように、摩擦は自動車の動きを制御する上で、なくてはならない力であり、その制御が自動車の性能に大きく関わっています。