はす歯ギヤ:静かで強い力の伝達
はす歯ギヤとは、軸に対して斜めに歯が切られた歯車のことです。普通の歯車、つまり軸に垂直に歯が切られた歯車を平歯車と呼びますが、はす歯ギヤはこの平歯車とは異なり、歯が斜めに傾斜しているのが特徴です。この斜めの歯のことをはす歯と言い、その傾斜角度をはす歯角と呼びます。
はす歯ギヤの中でも、歯の形がインボリュート曲線に基づいているものをインボリュートはす歯ギヤと呼びます。インボリュート曲線とは、円柱に糸を巻き付け、その糸をぴんと張りながらほどく時に糸の端が描く曲線のことです。このインボリュート曲線は、歯車の設計において非常に重要な役割を果たします。なぜなら、この曲線を用いることで、歯車同士がなめらかにかみ合い、動力を無駄なく伝えることができるからです。具体的には、インボリュート歯形を採用することで、歯車同士が接触する点が移動しても、回転速度の比が一定に保たれます。これにより、振動や騒音を抑え、伝達効率の高い、スムーズな動力伝達を実現することが可能になります。
はす歯ギヤは、この優れた特性から、自動車の変速機をはじめ、様々な機械装置に広く用いられています。例えば、工作機械やロボット、印刷機械など、精密な動きが求められる機械にも使われています。また、はす歯ギヤは、平歯車に比べて歯のかみ合い率が高いため、一度に複数の歯が同時にかみ合います。これにより、大きな力を伝達することが可能になり、耐久性も向上します。さらに、はす歯のかみ合いは徐々に始まるため、平歯車に比べて静かに動作するという利点もあります。