点火

記事数:(16)

エンジン

高エネルギー点火:エンジンの進化

車は、ガソリンと空気の混ぜ合わせたものに火をつけて力を生み出します。この火をつける役目を担うのが点火栓です。近頃は、環境への影響を少なくするために、車の燃費を良くすることが求められています。そのため、より効率的に燃料を燃やす方法が重要になっています。その中で注目されているのが「高い力での点火」です。これは、従来よりも強い火花で燃料に火をつけることで、よりしっかりと燃料を燃やし切る技術です。 高い力での点火は、名前の通り、より大きな電気の力で点火栓に火花を飛ばすことで実現されます。強い火花は、燃料と空気の混合気をより確実に、そして広い範囲で燃焼させることができます。これにより、燃え残りが減り、燃費が向上するだけでなく、排気ガスに含まれる有害物質も減少します。 従来の点火方式では、火花の力が弱いため、燃焼が不安定になりがちでした。特に、エンジンの回転数が低い時や、急にアクセルを踏んだ時などは、燃料がうまく燃え切らず、燃費が悪化したり、有害物質が増加したりする原因となっていました。高い力での点火は、これらの問題を解決する有効な手段として期待されています。 高い力での点火は、様々な車種への搭載が進んでおり、環境性能の向上に貢献しています。また、この技術は、今後さらに進化していくと予想されます。例えば、点火のタイミングや強さをより精密に制御することで、燃費をさらに向上させたり、より厳しい環境規制に対応できるようになるでしょう。さらには、新しい燃料への対応も期待されており、将来の車の技術にとって重要な役割を果たしていくと考えられます。
エンジン

2点着火方式で燃費向上

車は、私たちの生活に欠かせない移動手段となっています。その心臓部であるエンジンは、時代と共に大きく進歩してきました。より少ない燃料で遠くまで走り、排気ガスを減らし、滑らかな走りを実現するために、様々な技術が開発されてきました。最近話題となっている技術の一つに「二箇所点火方式」があります。この技術は、エンジンの燃焼効率を高めることで、燃費向上と排気ガスの減少に大きく貢献します。今回は、この二箇所点火方式について詳しく見ていきましょう。 従来のエンジンは、一つの点火栓で混合気に火花を飛ばし、燃焼させていました。しかし、この方法では、燃焼室の隅々まで均一に火が燃え広がらず、燃え残りが発生したり、燃焼速度が遅くなったりすることがありました。これが、燃費の悪化や排気ガスの増加につながっていました。二箇所点火方式は、一つの燃焼室内に二つの点火栓を設けることで、この問題を解決します。二つの点火栓から同時に火花を飛ばすことで、燃焼室の中心部と外周部の両方から燃焼が始まり、より速く、より均一に混合気が燃焼します。これにより、燃え残りが減少し、燃焼効率が向上するのです。 二箇所点火方式の利点は、燃費の向上と排気ガスの減少だけではありません。燃焼がより均一になることで、エンジンの回転も滑らかになり、運転時の振動や騒音も軽減されます。また、点火時期を細かく調整することで、エンジンの出力特性を変化させることも可能です。例えば、低回転域では燃費を重視した点火時期に設定し、高回転域では出力を重視した点火時期に設定することで、様々な運転状況に対応できます。 二箇所点火方式は、環境性能と運転性能の両方を向上させることができる、将来有望な技術です。今後、更なる改良が加えられ、より多くの車に搭載されることが期待されます。より環境に優しく、快適な車社会の実現に向けて、この技術が重要な役割を果たしていくと考えられます。
エンジン

スパークプラグ:エンジンの小さな巨人

車は、ガソリンを燃やすことで力を生み出し、走っています。ガソリンに火をつける大切な部品が、火花を出す装置、つまり点火栓です。点火栓は、エンジンの中でガソリンと空気が混ざったものに火花を飛ばし、燃焼を起こす重要な役割を担っています。ちょうど、ガスコンロでつまみをひねってガスに火をつけるように、エンジンでもガソリンに火をつけなければ動かすことができません。 点火栓は、エンジンの中に埋め込まれた小さな部品ですが、その構造は精密です。先端には電極と呼ばれる金属の突起があり、この電極間に高い電圧をかけると、まるで小さな雷のように火花が飛びます。この火花は数千度という非常に高い温度に達し、瞬時に混合気に点火します。 点火栓が正常に火花を出せなくなると、エンジンはかからなくなったり、スムーズに動かなくなったりします。例えば、点火栓の先が汚れていたり、電極間の隙間が適切でなかったりすると、火花が弱くなったり、出なくなったりします。これは、ガスコンロの点火装置が汚れて火がつきにくくなるのと同じです。そのため、点火栓の状態を定期的に確認し、必要に応じて交換することが、車の調子を保つ上で非常に大切です。また、エンジンの種類や性能に合わせて適切な点火栓を選ぶことも重要です。点火栓は小さいながらも、車の心臓部であるエンジンを動かすために欠かせない、重要な部品と言えるでしょう。
エンジン

車のエンジンと燃焼の仕組み

燃焼とは、物が空気中の酸素と結びついて熱と光を出すことです。まるで仲の良い友達同士が手をつなぐように、物質と酸素が結びつくことで、隠れていたエネルギーが熱と光という形で現れます。この現象を私たちは「燃える」と呼んでいます。 物を燃やすためには、3つの大切な仲間が必要です。一つ目は燃えるもの、つまり燃料です。車ではガソリンや軽油といった液体が燃料として使われます。二つ目は燃やすものである酸素です。空気中には酸素がたくさん含まれているので、私たちは簡単に物に火をつけることができます。そして三つ目は熱です。マッチを擦って火をつけるように、最初のきっかけとなる熱が必要です。この3つの仲間が揃うと、燃焼という名のパーティーが始まり、熱と光が生まれます。 車のエンジンの中では、ガソリンや軽油といった燃料が空気中の酸素と出会い、小さな爆発を何度も繰り返しています。この爆発によってピストンが動き、車が走るための力が生まれます。燃焼がうまくいかないと、車の力は弱くなり、走る距離も短くなってしまいます。また、排気ガスの中に有害な物質が増えてしまうこともあります。ですから、車の調子を良く保つためには、燃焼が正しく行われているかを確認することが大切です。燃料の種類や量、空気の量などを細かく調整することで、より効率的で環境に優しい燃焼を実現することができます。まるで料理人が材料や火加減を調整して美味しい料理を作るように、エンジンの燃焼も様々な工夫が凝らされているのです。
エンジン

火炎センサー:エンジンの燃焼を見守る賢い目

自動車の心臓部であるエンジン。その内部で燃料が燃えて力を生み出す燃焼の様子を監視する重要な部品、それが火炎感知器です。火炎感知器は、いわばエンジンの燃焼室の中を覗き込む電子的な目です。 火炎感知器の主な役割は、混合気への点火がきちんと行われたかを確認することです。燃料と空気が適切に混ざった混合気に点火プラグで火花が飛ばされ、燃焼が始まります。この最初の点火が正常に行われたかどうかを、火炎感知器は見逃しません。 さらに、火炎がどのように燃焼室全体に広がっていくかを把握するのも重要な役割です。火炎は一瞬で燃え広がるわけではなく、ある程度の時間をかけて広がっていきます。この広がり方を正確に捉えることで、エンジンの状態をより詳細に把握することができます。 火炎感知器にはいくつかの種類があります。点火プラグと一体になったものもあります。この一体型の感知器は、点火プラグで火花が飛んだ直後に、火炎が正しく発生したかを直接確認できます。まるで、点火プラグ自身の目で燃焼を確認しているかのようです。 一方、点火プラグとは別に設置されるタイプの火炎感知器もあります。複数の感知器を燃焼室の周囲に配置し、それぞれの感知器に火炎の信号が届くまでの時間差を計測します。この時間差から、火炎の伝播速度、つまり火炎がどのくらいの速さで燃焼室全体に広がっているかを計算することができます。 このようにして得られた情報は、エンジンの制御に利用されます。燃料噴射量や点火時期を最適に調整することで、エンジンの性能を向上させ、排気ガスを削減することができます。火炎感知器は、現代の高度なエンジン制御に欠かせない存在なのです。
エンジン

火花点火:エンジンの心臓部

火花点火は、ガソリン自動車などで広く使われている燃焼の仕組みです。空気と燃料をよく混ぜ合わせた混合気に、電気の火花を飛ばして燃焼を起こすのが特徴です。この火花を作る部品がスパークプラグと呼ばれるもので、エンジンの中に取り付けられています。 スパークプラグをよく見てみると、先端に小さな隙間を持つ電極があります。ここに高い電圧をかけると、電極間に電気が飛び、まるで小さな雷のような火花が発生します。この火花が、周りの混合気に点火し、燃焼が始まるのです。火花は小さく見えますが、瞬時に高温になり、周りの混合気を一気に燃え広がらせる力を持っています。 火花点火の仕組みを持つ自動車は、ガソリン自動車が代表的です。これとは別に、ディーゼル自動車のように、空気を圧縮して高温にすることで燃料に火をつける方法もあります。こちらは圧縮着火と呼ばれ、火花点火とは全く異なる仕組みです。火花点火は、外部から電気の力を使って点火するため、このように呼ばれています。 火花点火の大きな利点は、点火のタイミングを細かく調整できることです。エンジンの回転数や負荷といった運転状態に応じて、最適なタイミングで火花を飛ばすことで、燃焼効率を高めることができます。効率の良い燃焼は、自動車の力強さを高めるだけでなく、燃費の向上や排気ガスの減少にも繋がります。 自動車の技術は日々進歩しており、点火時期の制御もより精密になっています。コンピューターを使って様々なセンサーの情報から最適な点火時期を計算し、エンジン性能を最大限に引き出す制御が行われています。この技術の進歩が、環境に優しく、力強い自動車の実現に貢献しているのです。
エンジン

点火放電波形を読み解く

燃焼を起こす火花、その電気の流れ方を波形で表したものが点火放電波形です。これは、自動車の心臓部である発動機の中で、燃料と空気の混合物に火をつける小さな部品、点火栓の働きぶりを示す大切な情報です。ちょうど心電図が心臓の状態を伝えるように、この波形は発動機の点火の状態を詳しく教えてくれます。 この波形は、横軸に時間を、縦軸に電圧または電流の強さを示しています。時間と共に変化する電気の流れ、つまり放電の様子が曲線で描かれるのです。この曲線の形を見ることで、点火が適切に行われているか、問題がないかを調べることができます。 点火がうまくいかないと、発動機は調子を崩し、燃料も多く使ってしまいます。例えば、力が出なくなったり、スムーズに走らなくなったり、燃費が悪くなったりする原因の一つが、この点火不良です。ですから、点火放電波形を理解することは、自動車の調子を保つ上でとても重要です。 理想的な点火は、燃料と空気の混合物を完全に燃やし尽くす、力強い燃焼を引き起こします。これにより、発動機の力は最大限に引き出され、燃費も良くなります。点火放電波形からは、点火したかどうかだけでなく、その強さや持続時間といった質の情報も読み取ることができます。 経験豊富な整備士は、この波形を注意深く見て、まるで医者が心電図を読み解くように、点火装置の不具合箇所を特定します。そして、その情報に基づいて適切な修理を行い、発動機の調子を元通りにするのです。まるで発動機の言葉を読み解くように、点火放電波形は整備士にとってなくてはならない情報源なのです。
消耗品

白金プラグ:性能と長寿命の秘密

自動車の心臓部であるエンジンにとって、燃料と空気を混ぜたものに火をつける「点火プラグ」はなくてはならない部品です。その中でも「白金プラグ」は、高性能で知られています。名前の通り、火花を飛ばす電極の先端に「白金」という貴重な金属が使われています。 この白金は、熱にとても強く、溶けにくい性質を持っています。エンジンの内部は高温高圧という過酷な環境ですが、白金はびくともしません。一般的な点火プラグに使われるニッケル合金に比べて、白金は腐食にも強く、長持ちするという利点があります。交換の手間が減り、維持費用を抑えることにもつながります。 白金プラグのもう一つの長所は、確実な点火性能です。白金は電気をよく通すため、力強い火花を発生させることができます。この力強い火花のおかげで、エンジンはスムーズに始動し、加速も力強くなります。また、燃料がしっかりと燃焼されるため、燃費の向上も期待できます。 従来の点火プラグでは、電極が消耗して火花が弱くなりがちでした。しかし、白金プラグは耐久性が高いため、長期間にわたって安定した性能を維持できます。その結果、エンジンの出力低下や燃費悪化を防ぎ、常に快適な運転を楽しむことができます。 このように、白金プラグは高い耐久性と確実な点火性能を兼ね備え、現代の自動車に最適な点火プラグと言えるでしょう。少々値は張りますが、長い目で見れば経済的で、快適な運転にも貢献するため、選んで損はないでしょう。
エンジン

着火センサー:エンジンの隠れた守護神

車の心臓部であるエンジンは、ガソリンと空気の混合気に火花を飛ばして爆発させることで動力を生み出しています。この爆発が正常に行われているかを見守る重要な部品が、着火センサーです。着火センサーは、エンジンの各気筒に取り付けられており、燃焼室の中を覗いています。 燃焼室内で混合気が爆発すると、炎が発生します。炎の中には、電気を帯びた小さな粒がたくさん含まれています。この小さな粒はイオンと呼ばれ、電気を通す性質を持っています。着火センサーはこの性質を利用して、炎の様子を調べています。まるで炎が電気を通す性質を持っているかのように、センサーは電気の流れを感知することで、炎の発生や強さを正確に捉えることができます。 着火センサーが炎の発生を確認すると、その信号をエンジンの制御装置に送ります。制御装置はこの情報に基づいて、点火時期や燃料噴射量を調整し、エンジンの調子を整えます。例えば、炎が弱いと判断した場合には、燃料の量を増やすなどして、エンジンの出力を維持しようとします。 もし着火センサーが故障してしまうと、制御装置は正確な情報を受け取ることができなくなります。すると、エンジンの出力低下や燃費の悪化、排気ガスの増加など、様々な問題が起こる可能性があります。また、最悪の場合、エンジンが止まってしまうこともあります。そのため、着火センサーは車の安定した走行のために欠かせない部品と言えるでしょう。普段は目にすることはありませんが、縁の下の力持ちとしてエンジンのスムーズな動作を支えているのです。
エンジン

燃焼効率を高める二重点火

二重点火とは、エンジンの燃焼室の中で、燃料と空気の混合気に確実に火をつけるための技術です。 普通のエンジンでは、圧縮された混合気にスパークプラグで一度だけ火花を飛ばして点火しますが、二重点火では、短い間に二回火花を飛ばします。 一回目の火花は、確実に燃焼が始まるようにするためのものです。混合気の状態は常に一定ではなく、温度や圧力、空気と燃料の混ざり具合など、様々な要因で変化します。このような変化があっても、確実に点火できるように一回目の火花が飛ばされます。 二回目の火花は、燃焼の勢いを強めるためのものです。一回目の点火後、燃焼は徐々に広がっていきますが、二回目の火花によって、まだ燃えていない混合気に素早く火をつけ、燃焼速度を高めます。このように二段階で点火することで、より多くの混合気を完全に燃やすことができます。 二重点火のメリットは、エンジンの力を強くし、燃費を良くし、排気ガスを綺麗にすることです。 混合気がしっかりと燃えることで、エンジンの出力が向上し、力強い走りが実現できます。また、燃料が無駄なく燃えるため、燃費も向上します。さらに、不完全燃焼による有害な排気ガスも減らすことができ、環境にも優しい技術と言えるでしょう。 自動車のエンジン技術は常に進化を続けており、より環境に優しく、より力強い走りが求められています。その中で、二重点火は小さな工夫で大きな効果を生み出す、優れた技術の一つと言えるでしょう。
エンジン

着火のひみつ:沿面プラグとは?

自動車の心臓部であるエンジンは、ガソリンと空気の混合気に火花を飛ばして爆発させることで力を生み出します。この大切な役割を担うのがスパークプラグです。スパークプラグは、いわばエンジンの点火装置と言えるでしょう。 スパークプラグの中心には中心電極があり、その周囲をぐるりと囲むように接地電極が配置されています。この二つの電極の間に、数万ボルトにもなる高電圧がかけられます。すると、まるで雷が落ちるように、中心電極と接地電極の間で火花が飛びます。これが混合気に点火し、爆発を引き起こすのです。 この火花が力強く、適切なタイミングで発生することが、エンジンの性能を大きく左右します。火花が弱ければ、混合気がうまく燃焼せず、エンジンの出力は低下してしまいます。反対に、火花が強すぎると、エンジン部品の摩耗を早めてしまう可能性があります。また、火花の発生するタイミングがずれると、エンジンの回転が不安定になったり、燃費が悪くなったりします。 エンジンの回転数や負荷に応じて、火花の強さや発生のタイミングを精密に制御する必要があります。そこで、現代の自動車には高度な点火システムが搭載されています。このシステムは、様々なセンサーの情報に基づいて、最適な火花を発生させるように制御しています。これにより、エンジンの出力と燃費を向上させ、排気ガスをきれいにすることができます。まさに、縁の下の力持ちと言えるでしょう。
エンジン

エンジンの失火:原因と影響

失火とは、車の心臓部であるエンジンの中で、燃料と空気が混ざった混合気が適切な時に燃えない現象です。普段は、スパークプラグという部品が電気の火花で混合気に火をつけ、力を生み出しています。これは、ちょうどライターでガスコンロに火をつけるようなものです。しかし、この火がうまくつかない時、つまり失火が起こると、エンジンはスムーズに動けなくなります。 自転車のペダルを漕いでいる時、ペダルが空回りして力が伝わらない時があると思います。失火もこれと同じように、エンジンの力がうまく伝わらず、車がスムーズに走らなくなったり、力が弱くなったり、燃料も多く使ってしまいます。また、排気ガスの中に有害な物質が増え、環境を汚染する原因にもなります。さらに放置すると、エンジン自体が壊れてしまうこともあります。 失火は、エンジンの複数の部屋(気筒)で同時に起こることもあれば、特定の気筒だけで起こることもあります。その原因は様々で、スパークプラグの劣化や、燃料を送る部品の不具合、エンジンの状態を監視するセンサーの故障などが考えられます。 人間の体と同じように、車は不調を様々なサインで伝えてくれます。例えば、エンジンから異音がする、車がスムーズに加速しない、燃費が悪化するなどです。このような症状が見られた場合は、すぐに専門家に見てもらうことが大切です。早期に発見し対処することで、大きな修理を防ぎ、快適な運転を続けることができます。まるで体の不調を感じたら病院に行くように、車の不調にも気を配り、定期的な点検を心がけましょう。
エンジン

過早着火:エンジンの不調を探る

車は、小さな爆発を連続して起こすことで動力を得ています。この爆発は、ガソリンと空気の混合気に、点火プラグで火花を飛ばすことで正確なタイミングで起こされます。しかし、本来のタイミングよりも早く、点火プラグの火花が飛ぶ前に混合気が勝手に燃え出すことがあります。これが過早着火と呼ばれる現象です。まるで、指揮者の合図より前にオーケストラが演奏を始めてしまうようなもので、エンジンにとっては大変な不調和を起こします。 過早着火の主な原因は、エンジンの内部にある燃焼室の壁面などに異常に高温になった箇所が存在することです。混合気はこの高温部分に触れることで自然発火してしまうのです。高温の原因としては、燃焼室に溜まったカーボン堆積物や、エンジンオイルの混入、冷却水の不足によるオーバーヒートなどが考えられます。また、燃料の質が悪い場合や、エンジン設計上の問題も原因となることがあります。 過早着火が発生すると、エンジンの出力は低下し、異様な金属音を発生させることがあります。さらに、異常燃焼が続くと、ピストンやシリンダーヘッドなどのエンジン部品に大きな負担がかかり、最悪の場合は損傷につながる可能性もあります。過早着火は初期段階では気づきにくい現象ですが、燃費の悪化やノッキング音など、前兆となる症状が現れることもあります。これらの兆候を見逃さず、早期に発見し適切な対処をすることが、エンジンを守り、安全で快適な運転を続けるために非常に重要です。
エンジン

ノッキング:異常燃焼を防ぐ

「ノッキング」とは、自動車のエンジン内部で起こる異常な燃焼現象です。エンジンが正常に作動している時は、ガソリンエンジンでは点火栓によって、ディーゼルエンジンでは圧縮熱によって、それぞれ適切なタイミングで燃料に火がつけられます。しかし、様々な要因でこの燃焼がうまくいかずにノッキングが発生することがあります。 ガソリンエンジンでは、本来、点火栓が火花を散らすことで混合気に火がつき、ピストンを押し下げる力が発生します。しかし、点火栓による燃焼の前に、混合気の一部が自然に発火してしまうことがあります。これがノッキングです。高温高圧の環境下で起きやすく、金属を叩くような音がすることから「ノッキング」と呼ばれています。ノッキングが継続すると、ピストンやシリンダーヘッドなどに損傷を与え、エンジンの寿命を縮める原因となります。 一方、ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンとは異なり、点火栓を用いずに燃料に火をつけます。シリンダー内で空気を圧縮して高温にし、そこに燃料を噴射することで自己着火させています。ディーゼルエンジンでのノッキングは、燃料噴射のタイミングが遅れることで発生します。噴射が遅れると、一度に多くの燃料がシリンダー内に蓄積されます。そして、この蓄積された燃料が一気に燃焼することで、急激に圧力が上昇し、ノッキングが発生します。ガソリンエンジンと同様に、ディーゼルエンジンでもノッキングが続くとエンジンに大きな負担がかかり、損傷の原因となります。 どちらのエンジンでも、ノッキングはエンジンの出力低下や燃費悪化につながるだけでなく、深刻なエンジントラブルを引き起こす可能性があります。そのため、ノッキングが発生した場合は、早急な点検と修理が必要です。日頃から適切な燃料を使用したり、エンジンのメンテナンスを怠らないことで、ノッキングの発生を予防することが大切です。
エンジン

クルマの心臓部、点火装置の役割

自動車の心臓部ともいえる燃焼機関は、ガソリンと空気の混合気に点火することで動力を生み出します。この大切な点火の役割を担うのが点火装置です。混合気に火花を飛ばし、爆発させることでピストンを動かし、車を走らせる力を生み出しています。 点火装置は、いくつかの部品が連携して動作します。まず蓄電池は、点火に必要な電気の供給源です。この電気は点火コイルに送られ、高い電圧に変換されます。昔ながらの車では、配電器と呼ばれる部品が、変換された高電圧の電気を各々の点火栓に適切なタイミングで分配する役割を担っていました。 点火栓は、エンジンの燃焼室内に設置されており、先端の電極間で火花を発生させます。この火花が混合気に点火し、爆発を引き起こすのです。この一連の動作が、エンジンを動かすための基本的な流れとなります。近年の自動車では、配電器を使わず、それぞれの点火栓に直接点火コイルを配置する方式が主流となっています。この方式は直接点火方式と呼ばれ、より正確な点火時期の制御を可能にし、エンジンの出力向上や燃費向上、そして排気ガスの浄化にも貢献しています。 点火装置は、エンジンの性能を左右する重要な部品です。適切な点火時期の制御は、エンジンのスムーズな回転を促し、燃費の向上にも繋がります。もし点火装置に不具合が生じると、エンジンがかかりにくくなったり、出力不足に陥ったり、燃費が悪化するなど、様々な問題が発生する可能性があります。そのため、定期的な点検と適切な整備が重要です。 点火装置は、自動車の性能を最大限に引き出すために、無くてはならない存在なのです。
エンジン

圧縮点火の仕組みと利点

圧縮点火とは、空気をぎゅっと押し縮めることで温度を上げ、燃料に火をつける方法です。 ディーゼル機関はこの仕組みを使っています。ガソリン機関のように火花で火をつけるのとは違い、火花を出す部品を使わずに燃料を燃やすのが特徴です。 ピストンという部品がシリンダーの中を上に動くことで、中の空気が押し縮められます。すると、空気の温度が上がり、そこに燃料を霧状に吹き付けると、熱い空気と触れた燃料が自然に火がつきます。 このように、ぎゅっと縮めることで自然に火をつけるので、火花で火をつけるよりも、もっと強く空気を縮めることができます。このことを圧縮比が高いと言います。そして、圧縮比が高いほど、燃料のエネルギーを無駄なく力に変えることができ、燃費が良くなります。これを熱効率が良いと言います。 また、火花で火をつける場合は、火をつけるタイミングを精密に調整する必要がありますが、圧縮点火の場合はそのような必要がないため、機関の仕組みを簡素にすることが可能です。 圧縮比が高いことによる燃費の良さは、大きな自動車や船などに使われるディーゼル機関で特に役立ちます。これがディーゼル機関が広く使われている理由の一つです。 圧縮点火は、使う燃料の種類によっては排気ガスにすすが含まれるといった問題点もありますが、燃費の良さと丈夫さから、色々なところで重要な役割を果たしています。