焼付き

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駆動系

車の極圧:焼き付きを防ぐ技術

車は、たくさんの部品が組み合わさり、複雑な動きをしています。エンジンや変速機、車軸など、それぞれの部品は絶えず回転したり、滑ったりしながら力を伝えています。これらの部品がスムーズに動くためには、接触面に潤滑油が不可欠です。潤滑油は薄い膜を作り、部品同士が直接触れ合うことを防ぎ、摩擦や摩耗を減らす役割を果たします。 しかし、常に油膜が万全に機能するとは限りません。特に、急発進や急ブレーキ、重い荷物を積んだ時など、大きな力が部品にかかると、油膜が破れてしまうことがあります。そうなると、金属の表面同士が直接接触してしまいます。この状態を境界潤滑や混合潤滑と言います。 金属表面は、一見滑らかに見えても、ミクロのスケールで見ると、小さな山や谷が無数に存在しています。大きな力が加わると、これらの微小な突起が互いに押し付け合い、非常に高い圧力が局所的に発生します。これが極圧と呼ばれる現象です。極圧は、接触面積が非常に小さいため、想像以上の高圧になります。 極圧状態では、接触部分の金属の温度が急激に上昇し、部分的に溶けてくっついてしまうことがあります。これが焼き付きと呼ばれる現象です。焼き付きが起こると、部品の表面が損傷し、最悪の場合、部品が動かなくなったり、破損したりする可能性があります。 このような焼き付きを防ぐために、潤滑油には極圧添加剤と呼ばれる特別な成分が加えられています。極圧添加剤は、金属表面と化学反応を起こし、薄い膜を形成することで、金属同士の直接接触を防ぎ、焼き付きを抑制する働きをします。これにより、過酷な条件下でも部品をスムーズに動かし、摩耗や損傷を防ぐことが可能になります。
エンジン

ピストン焼付き:エンジンの致命傷

自動車の動力源である原動機、いわば心臓部にあたるのが原動機です。その原動機内部で、上下運動を絶え間なく繰り返す部品が活塞です。この活塞は、原動機の性能を大きく左右する重要な部品であり、その動きが円滑でなくなると、自動車の運転に支障をきたします。活塞の不具合の中でも深刻なもののひとつに「活塞焼き付き」があります。 活塞焼き付きとは、活塞が円筒形の穴の中で動かなくなる状態を指します。高温になった活塞が、それを包み込む円筒形の穴(シリンダー)の壁に、まるで溶接されたかのようにくっついてしまうのです。焼き付きが起こると、原動機は正常に回転しなくなり、自動車は動かなくなってしまいます。 この焼き付きは、様々な要因が重なって発生します。主な原因としては、潤滑油の不足が挙げられます。潤滑油は、活塞とシリンダーの隙間を埋めて摩擦を減らす役割を担っています。潤滑油が不足すると、摩擦熱によって活塞の温度が上昇し、焼き付きが発生しやすくなります。また、冷却水の不足も原因の一つです。冷却水は原動機の温度を一定に保つ役割を果たしており、冷却水が不足すると原動機が過熱し、活塞焼き付きにつながる可能性があります。その他にも、混合気が薄すぎる場合や、点火時期がずれている場合など、原動機の燃焼状態に異常があると、活塞焼き付きのリスクが高まります。 活塞焼き付きは、原動機に深刻な損傷を与える可能性があります。軽度の場合、活塞やシリンダーの交換だけで済むこともありますが、重度の場合、原動機全体を交換する必要がある場合もあります。そのため、日頃から原動機の点検整備を行い、焼き付きの予防に努めることが大切です。具体的には、潤滑油や冷却水の量を定期的に確認すること、異音や振動など、いつもと違う様子がないか注意深く観察することが重要です。早期発見、早期対応が、大きなトラブルを防ぐ鍵となります。