隠れた熱対策:ナトリウム封入バルブ
車の心臓部とも言える機関の中で、燃焼を起こす部屋、燃焼室。その中で働く排気弁は、まさに灼熱地獄とも呼べる過酷な環境に置かれています。ピストンが上がり下がりするたびに、高温高圧の燃焼ガスが排気弁を襲います。特に、燃えカスを外に出す排気行程では、弁の傘の部分は1000度という想像を絶する高温に達することもあります。
この高温は、排気弁にとって大きな負担となります。高温にさらされ続けると、弁の材料の強度が落ちてしまい、変形したり破損したりする恐れがあります。さらに、弁が座る弁座との密着が悪くなり、せっかく圧縮した空気が漏れてしまったり、機関の力が十分に出なくなったりする可能性も出てきます。
このような問題を防ぐため、排気弁には熱をよく伝える性質と高い耐熱性が求められます。熱くなった傘の部分の熱を効率よく逃がすことが重要です。傘の部分に溜まった熱を、弁座や弁棒を通して、周りの冷却水に伝えることで、弁の温度上昇を抑えることができます。
熱を素早く逃がす工夫として、中空構造の排気弁もあります。弁の内部を空洞にすることで、ナトリウムなどの熱伝導率の高い金属を封入することができます。封入された金属は、液体となって弁の中を動き回り、傘の部分から熱を奪い、弁棒へと熱を運びます。これにより、さらに効率的に排気弁の冷却を行うことができます。機関が安定して長く働くためには、このような熱対策が欠かせないのです。