皮膜形成

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塗料の乾燥:蒸発乾燥の仕組み

蒸発乾燥とは、液体が気体へと姿を変える現象、つまり蒸発を利用した乾燥方法のことです。私たちの暮らしの中でも、ごく当たり前に見られる現象で、例えば、洗濯物が乾くのもこの蒸発乾燥によるものです。太陽の熱で温められた洗濯物に含まれる水分が、空気中に水蒸気として逃げていくことで、乾いた状態になります。 この蒸発乾燥は、物の表面を色付けたり、保護したりする塗料においても、重要な役割を担っています。塗料は、液体状の「溶剤」と塗膜となる固体の「成分」が混ぜ合わされたものです。塗料を塗った面では、溶剤が蒸発することで、残った固体成分がくっつき合い、塗膜を作っていきます。これが蒸発乾燥による塗膜形成の仕組みです。 例えば、ラッカーやシェラックニスなどは、この蒸発乾燥で塗膜を作る代表的な塗料です。これらの塗料は、蒸発しやすい溶剤を使っているので、比較的早く乾くのが特徴です。また、シンナーを使った油性塗料も蒸発乾燥を利用しています。シンナーが蒸発することで塗料の樹脂成分が固まり、塗膜が形成されます。 さらに、蒸発乾燥は、塗膜の厚さにも大きく関わってきます。溶剤が蒸発する時に、塗膜全体の体積が減るため、塗った時よりも薄い塗膜が出来上がります。そのため、厚い塗膜を作るためには、一度にたくさん塗るのではなく、数回に分けて重ね塗りする必要があります。一度塗って乾かし、また塗って乾かすという作業を繰り返すことで、徐々に厚みを増していくのです。このように、蒸発乾燥は塗料の仕上がり具合に直結する重要な要素と言えるでしょう。