自動変速機

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駆動系

滑らかな変速の秘密:高度な制御技術

車を走らせるには、エンジンの回転する力をタイヤに伝える必要があります。しかし、エンジンの回転数は一定ではありません。状況に応じて、低い回転数で大きな力を出したり、高い回転数で速く回転したりする必要があります。この回転数の変化を滑らかにタイヤに伝えるのが、動力の橋渡し役である自動変速機の役割です。自動変速機の中心となる技術が、クラッチトゥクラッチ制御です。 クラッチとは、エンジンの回転をタイヤに伝えたり、遮断したりする装置です。手動の変速機を持つ車では、運転者が自らクラッチペダルを操作してギアを切り替えます。一方、自動変速機では、この操作を機械が自動で行います。クラッチトゥクラッチ制御とは、あるギアから次のギアへ切り替える際に、前のギアのクラッチを切り離すと同時に、次のギアのクラッチを繋ぐ技術のことです。 この切り替えは、非常に精密な制御が求められます。もし前のギアのクラッチが完全に切れる前に次のギアのクラッチが繋がってしまったら、ショックが発生し、乗っている人は不快な思いをします。逆に、前のギアのクラッチが切れた後に次のギアのクラッチが繋がるまでに時間がかかりすぎると、動力が途切れて加速が鈍くなってしまいます。まるで空中ブランコの演技者が、タイミングを合わせて次々と別のブランコに飛び移るように、動力の流れを途切れさせることなく、滑らかにギアを切り替える必要があるのです。 このクラッチトゥクラッチ制御の巧拙が、変速時の滑らかさ、すなわち乗り心地の良さを決定づける重要な要素となります。制御が精密であれば、まるで無段階変速のように滑らかに加速し、快適な運転を楽しむことができます。技術の進歩により、この制御はますます洗練され、より滑らかで快適な乗り心地を実現しています。