設計で役立つスケッチ図の力
描くことは、考えること。設計図の原点とも言えるのが、スケッチ図です。スケッチ図とは、部品や機械などの構造物を、自由に手で描いた図のことです。まるで画家が風景画を描くように、設計者も自分の目で見たものを、そのまま紙の上に書き記していきます。定規やコンパスといった道具は使いません。線の太さや濃さ、走り書きのような勢いのある線も、設計者の思考を伝える大切な情報となります。写真のように精密に描写するのではなく、要点を押さえた簡略化された表現が特徴です。
スケッチ図の目的は、見たままを正確に写し取ることではありません。重要なのは、自分が何を見て、何を感じ、何を考えたかを表現することです。例えば、新型の車のデザインを思いついたとしましょう。その時に、頭の中に浮かんだイメージをスケッチ図に描いていくことで、漠然としたアイデアが具体的な形へと変わっていきます。線の強弱や走り書きによって、どの部分に力を入れているのか、どんな形状にしたいのかといった、設計者の意図が表現されます。また、スケッチを描く過程で、新しいアイデアが生まれることもあります。
スケッチ図は、設計者の思考過程を記録した貴重な資料となります。設計の初期段階では、様々なアイデアが検討され、試行錯誤が繰り返されます。スケッチ図は、その過程で生まれたアイデアや思考の軌跡を視覚的に表現した記録です。後から見返すことで、当時の発想を思い出すことができますし、他の設計者とアイデアを共有することも容易になります。また、スケッチ図をもとに、より詳細な設計図を作成していくことも可能です。まるで設計者の頭の中を覗き込んでいるかのようなスケッチ図は、設計の進化を支える、大切な役割を担っていると言えるでしょう。