自動車デザインの要、テンプレート
自動車の外観は、平面の設計図から立体的な車体へと形作る、複雑で緻密な工程を経て生まれます。この工程で、設計者の思い描いた形を正確に再現し、出来上がりを確かめるために欠かせない道具が「型板」です。型板は、設計図に描かれた断面図の形を精密に切り抜いた板で、主に粘土模型を作る際に使われます。
粘土で作った車体の模型に型板を当ててみて、設計図通りの形になっているか、曲線や面の繋がりは滑らかかを確かめ、細かな調整を加えていきます。人の目と手で確認するこの作業は、計算機で作った立体画像だけでは捉えきれない微妙な差異や全体の釣り合いを掴むためにとても重要で、熟練した技術と経験が必要とされます。
型板は様々な材質で作られます。初期の段階では薄い金属板やプラスチック板などが用いられ、最終段階に近づくにつれて木製のものが用いられることもあります。型板の形状も様々で、車体の断面を示すものや、特定の部品の形状を示すものなど、用途に合わせて使い分けられます。
設計者の頭の中にあるイメージを現実のものへと繋ぐ型板は、まさに「翻訳機」のような役割を担っています。設計図に描かれた線が、型板を通して粘土という素材と対話し、立体的な形へと変換されていくのです。そして、この型板による確認と修正の繰り返しを経て、最終的に美しく、機能的な車が完成するのです。設計図上の二次元の線が、型板という媒介を経て三次元の命を吹き込まれる、その過程はまさに、ものづくりの醍醐味と言えるでしょう。