降伏伸び:鋼材の変形を知る重要な指標
金属材料は、引っ張られると伸びます。そして、ある程度の力までは、力を抜けば元の長さに戻ります。これを弾性変形と言います。しかし、さらに力を加えていくと、力を取り除いても元に戻らない永久的な変形が生じます。この現象を塑性変形と言います。降伏とは、弾性変形から塑性変形に移る境目のことです。金属材料を引っ張っていくと、最初は弾性変形を続けますが、ある点で急に伸び始めます。この点を降伏点と言い、この時の力を降伏応力と言います。降伏点は、材料が永久変形し始める、つまり壊れ始める点を示すため、安全設計上重要な指標となります。
降伏伸びとは、この降伏点に達した後に、力を増やさなくても材料が伸び続ける現象を指します。粘土を想像してみてください。粘土をゆっくり引っ張ると、ある点で抵抗が小さくなり、力を加えなくても伸びることがあります。金属材料でも同じように、降伏点に達すると、力を加えなくても自重で伸びることがあります。これを降伏伸びと呼びます。降伏伸びは、材料の粘り強さを示す指標です。降伏伸びが大きい材料は、降伏した後も大きく変形できるため、破壊しにくい性質を持っています。
降伏伸びは、応力ひずみ図と呼ばれるグラフから読み取ることができます。応力ひずみ図は、材料に加える力と材料の伸びの関係を示したグラフです。このグラフ上で、降伏点から再び応力が増加し始めるまでの伸びの量が降伏伸びを表します。建物や橋などの構造物には、地震や強風などの大きな力が加わる可能性があります。このような構造物には、降伏伸びの大きい鋼材を使うことで、大きな力が加わってもすぐには壊れず、変形することでエネルギーを吸収し、構造物の崩壊を防ぐことができます。そのため、降伏伸びは、建物の安全性や耐久性を評価する上で重要な要素となります。