クルマの動きと慣性力の関係
車は、何も力を加えなければ、止まっている時は止まり続け、動いている時はそのまま動き続けようとします。これを物の性質という言い方で表し、この性質を慣性といいます。この慣性のせいで、まるで力が働いているように感じるのが、慣性力です。たとえば、止まっている車を急に動かすと、人は後ろに押し付けられるような感じがします。これは、体がそのまま止まり続けようとするためです。逆に、動いている車が急に止まると、人は前につんのめるような感じがします。これは、体がそのまま動き続けようとするためです。
この慣性力の大きさは、二つの要素で決まります。一つ目は車の重さです。重い車ほど、動きの変化に抵抗しようとする力が大きくなり、慣性力も大きくなります。小さい車を手で押して動かすのは簡単でも、大きな車を同じように動かすのは大変です。これは、大きな車の方が慣性が大きいからです。つまり、重い車ほど大きな慣性力が生まれるのです。二つ目は動きの変化の激しさ、つまり加速度です。急ブレーキや急発進のように、短時間で大きく速度が変化すると、慣性力は大きくなります。ゆっくりとブレーキを踏んで止まる時よりも、急ブレーキで止まる時の方が、体に感じる力は大きくなります。つまり、急激な速度変化ほど大きな慣性力が生まれるのです。
この慣性力は、車の設計や運転において重要な役割を果たします。急ブレーキ時に乗客が前方に投げ出されるのを防ぐために、シートベルトが備えられています。また、カーブを曲がるとき、外側に飛ばされるような力を感じますが、これも慣性力によるものです。車体がカーブを曲がるために必要な力と反対方向に、体はまっすぐ進もうとするためです。これらのことから、安全な車を作るためには、慣性力を理解し、制御することが欠かせません。