非破壊検査

記事数:(3)

車の生産

サーモグラフィ技術:車の進化を支える熱の監視

ものを温めると、そこから目には見えない光が出てきます。この光を赤外線といいます。赤外線は温度が高いものほど強く出ます。この赤外線の強さを色の違いで表す技術が、温度を色で見る技術、つまりサーモグラフィです。 サーモグラフィでは、特別なカメラを使って赤外線を捉えます。このカメラは、赤外線の強さに応じて、異なる色を割り当てます。一般的には、温度が高い部分は赤や黄色、オレンジといった暖色系の色で、温度が低い部分は青や紫、緑といった寒色系の色で表示されます。こうして、普段は見えない温度の違いを、色の変化として見ることができるのです。 この技術は、様々な分野で役立っています。例えば、病院では、体温を測るのに使われています。また、家の壁などの断熱性能を調べるのにも使われます。断熱が不十分な場所は、熱が逃げているため、周囲より温度が低く表示されます。 特に、自動車の開発や製造では、この技術は欠かせません。エンジンの温度管理やブレーキの性能試験、部品の耐久性試験など、様々な場面で活用されています。例えば、ブレーキを強く踏んだときに、ブレーキパッドのどの部分がどれくらい熱くなるかを調べることができます。また、エンジンが動いているときに、冷却水がエンジンの各部分をきちんと冷やしているかを確かめることもできます。さらに、新しく開発した部品が、高い温度や低い温度でもきちんと動くかを調べるのにも役立ちます。このように、温度を色で見る技術は、自動車の安全性を高め、性能を向上させる上で、重要な役割を果たしているのです。
車の生産

車の安全性:内部欠陥の見えない脅威

車の部品の中には、外から見ただけではわからない欠陥が潜んでいることがあります。これを内部欠陥と呼びます。内部欠陥には、材料の中にできた傷や、空洞、本来混入するはずのない異物が入り込んでいる状態などが含まれます。まるで健康そうに見える人の体内に、病気の原因となるものが隠れているのと同じように、一見しただけでは問題がないように見えても、部品の内部に欠陥が潜んでいることがあるのです。 これらの欠陥は、部品を作る過程で発生することがあります。例えば、金属を溶かして型に流し込む際に、溶かし方が不十分だったり、型にゴミが混入していたりすると、内部に空洞や異物ができてしまうことがあります。また、部品を加工する際にも、強い力を加えすぎたり、工具に問題があったりすると、内部に傷ができてしまうことがあります。 内部欠陥は外から見えないため、発見することが非常に難しいという問題があります。部品を一つ一つ壊して確認するわけにはいきませんし、レントゲン写真のように内部を透かして見る特殊な装置も必要になります。そのため、製品検査の段階で見逃されてしまう可能性も高く、大きな事故につながる危険性もはらんでいます。 内部欠陥は、車の性能や安全性を大きく損なう可能性があります。例えば、エンジン部品に内部欠陥があると、エンジンの出力が低下したり、最悪の場合、エンジンが壊れてしまうこともあります。また、ブレーキ部品に内部欠陥があると、ブレーキが効かなくなり、重大な事故につながる危険性も考えられます。 このような事態を防ぐために、自動車メーカーは様々な対策を講じています。部品を作る過程で、材料の純度を高めたり、加工方法を工夫することで、内部欠陥の発生を抑制しています。また、超音波検査などの非破壊検査技術を用いて、部品を壊すことなく内部欠陥を検査する取り組みも積極的に行われています。このように、目に見えない欠陥を早期に発見し、安全な車を作るための技術開発は、今もなお続けられています。
車の開発

赤外分光で車の未来を照らす

物質を構成する成分や構造を解き明かす方法の一つに、赤外分光光度法と呼ばれる手法があります。この手法は、物質に赤外線を照射し、その吸収のされ方を調べることで、物質の正体を明らかにするものです。 私たち人間の目には見えない赤外線ですが、太陽の光にも含まれる身近な光です。この赤外線を物質に当てると、物質を構成する分子が振動を始めます。分子は原子同士が結合してできていますが、この結合はまるでバネのように伸縮したり、揺れ動いたりしています。赤外線が当たると、このバネのような結合がさらに激しく振動するのです。 重要なのは、この振動の仕方が分子ごとに異なる点です。水分子は水の分子特有の振動の仕方を示し、二酸化炭素分子は二酸化炭素分子特有の振動の仕方を示します。例えるなら、それぞれの分子は固有の音色を持つ楽器のようなものです。太鼓を叩けば太鼓の音が、笛を吹けば笛の音が鳴るように、赤外線を当てると、それぞれの分子は固有の振動を始めます。この振動の違いが、赤外線の吸収のされ方の違いとなって現れるのです。 赤外分光光度計と呼ばれる装置を使うと、どの波長の赤外線がどれくらい吸収されたかを詳しく調べることができます。得られたデータは、まるで分子の指紋のようなものです。この指紋を既知の分子の指紋と照合することで、未知の物質が何でできているのかを特定できるのです。赤外分光光度法は、プラスチック、ゴム、塗料など様々な物質の分析に利用されており、私たちの生活を支える重要な技術の一つと言えるでしょう。