駆動系設計

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車の駆動力を支える入力トルク

車を走らせる力は、エンジンの回転運動から生まれます。この回転運動の強さを表すのが回転力、つまりトルクです。車は、このトルクをタイヤに伝えることで前に進みます。トルクは、エンジンから出てすぐにタイヤに伝わるわけではありません。いくつかの装置を介して段階的に伝えられるのです。まずエンジンから変速機へ、次に変速機からデフへと、まるでバトンのようにトルクは渡されていきます。この時、各装置へ最初に伝わるトルクのことを入力トルクと言います。 入力トルクは、車の動きを理解する上で欠かせない要素です。例えば、エンジンが作り出したトルクが変速機への入力トルクとなり、変速機はこの入力トルクを状況に応じて変化させます。平坦な道を走る時と急な坂道を登る時では、必要なトルクの大きさが違います。変速機は、歯車の組み合わせを変えることでトルクを増減させ、その時々に合った適切なトルクをデフへと伝えます。この時、変速機からデフへ伝えられるトルクが、デフへの入力トルクとなります。 このように、各装置は前の装置から受け取ったトルクを、次の装置へと送り出していきます。エンジンが生み出したトルクは、変速機への入力トルクと全く同じ大きさです。そして、変速機が調整したトルクは、デフへの入力トルクとなります。つまり、ある装置の出力トルクは、次の装置の入力トルクと等しい関係にあるのです。最終的に、デフはタイヤを回転させるための力へとトルクを変換し、車はスムーズに走ることができるのです。ですから、入力トルクを知ることで、車がどのように動いているのかをより深く理解することができます。
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車の軸スラスト:回転部品の隠れた力

くるまがなめらかに動くためには、さまざまな部品が複雑に組み合わさって働いています。その中で、部品の回転を支える軸という棒に沿って発生する力、軸押し力というものがあります。これは、軸を回転させる力とは別に、軸を押し出す、または引っ張る方向に働く力のことを指します。 例えば、くるまの速度を変える装置である変速機の中には、たくさんの歯車と軸があります。これらの歯車が噛み合う時、回転する力だけでなく、歯車を軸方向に押したり引いたりする力が同時に発生します。これが軸押し力です。また、エンジンの心臓部である曲がり軸も、ピストンが上下に動くことで回転しますが、この時にも軸押し力が発生します。ピストンが曲がり軸を押し下げることで、軸を下方向に押す力が生まれるのです。 軸押し力は、部品の摩耗や破損を招く可能性があるため、設計者はこの力を十分に考慮する必要があります。軸押し力を無視して部品を設計すると、軸と軸受けがこすれ合って摩耗し、部品の寿命が短くなってしまいます。最悪の場合、軸が折れたり、軸受けが壊れたりして、くるまの故障につながる恐れもあります。 軸押し力を小さくするために、いくつかの工夫が凝らされています。例えば、軸受けの種類を変える、軸の表面を滑らかにする、軸押し力を相殺する仕組みを取り入れるなどです。これらの工夫によって、軸押し力による部品への負担を減らし、くるまのなめらかで安全な動きを実現しています。軸押し力は普段目にすることはありませんが、くるまの性能を維持する上で、非常に大切な役割を担っているのです。