10モード排出ガス規制とは
かつて、自動車の普及とともに、排気ガスによる大気汚染が深刻な社会問題となっていました。工場の煙突から出る煙のように目に見えるものではありませんでしたが、自動車から排出される目に見えない有害物質が、私たちの健康や環境に大きな悪影響を与えていたのです。そこで、大気を守り、人々の健康を守るために、国は自動車から排出される有害物質の量を規制する必要性に迫られました。そして、1973年、日本では自動車の排出ガス規制が初めて導入されることになりました。これは、日本の自動車の歴史における大きな転換点であり、環境保護への意識が高まり始めた時代を象徴する出来事と言えるでしょう。
この初めて導入された排出ガス規制では、「10モード」と呼ばれる試験方法を用いて、排出ガス量を測定することになりました。10モードとは、一定の速度変化と停止を繰り返す運転パターンを模擬した試験方法です。実際の走行状態を再現することで、より正確な排出ガス量を測定することを目指しました。しかし、この10モード試験は、実際の道路状況を完全に再現するには至らず、測定値と実際の排出ガス量との間にずれが生じることもありました。
当時は、排出ガス規制に対応するための技術も未熟で、自動車メーカー各社は、規制値をクリアするために様々な試行錯誤を繰り返していました。例えば、エンジンの燃焼効率を改善したり、排気ガスを浄化する装置を開発したりと、様々な技術革新が行われました。今では当たり前となっている排出ガス規制ですが、当時はまだ始まったばかりで、多くの課題を抱えていたのです。しかし、この初めての排出ガス規制が、その後のより厳しい規制へとつながり、日本の自動車の環境性能向上に大きく貢献したことは間違いありません。今では、より高度な試験方法が導入され、排出ガス規制も強化されています。この歴史を振り返ることで、環境保護の重要性を改めて認識し、未来のよりクリーンな自動車社会の実現に向けて、努力を続ける必要があると言えるでしょう。