窒素酸化物対策の鍵、尿素SCRシステム
窒素酸化物とは、空気中に含まれる窒素と酸素が結びついてできる化合物です。よく「ノックス」と略されて呼ばれます。高温の燃焼過程で発生しやすく、自動車のエンジン内でも作られます。空気中の窒素と酸素は通常の状態では結びつきにくいのですが、エンジン内のような高温高圧の環境では容易に反応してしまいます。
この窒素酸化物は、私たちの健康や環境に様々な悪影響をもたらします。代表的なものとして、光化学スモッグの発生があげられます。光化学スモッグは、目やのどに刺激を与えたり、呼吸器系の病気を悪化させたりするなど、私たちの健康を害するものです。また、窒素酸化物は酸性雨の原因物質の一つでもあり、森林や湖沼などの自然環境にも悪影響を及ぼします。
自動車の中でも、ディーゼルエンジン車はガソリンエンジン車に比べて窒素酸化物の排出量が多いため、より厳しい規制が設けられています。そのため、ディーゼル車には窒素酸化物の排出量を減らすための様々な工夫が凝らされています。例えば、排気ガスを浄化する装置を取り付けたり、エンジンの燃焼方法を改善したりといった対策が行われています。
近年、環境問題への関心の高まりから、世界各国で窒素酸化物の排出規制が強化されています。自動車メーカーは、これらの規制に対応するために、尿素SCRシステムのような、より効果的な排出ガス浄化技術の開発に力を入れています。尿素SCRシステムは、排気ガスに尿素水を噴射することで、窒素酸化物を無害な窒素と水に分解するシステムです。このシステムの導入により、ディーゼル車からの窒素酸化物排出量を大幅に削減することが可能となります。 今後も、窒素酸化物排出量の削減に向けた技術開発は、ますます重要になっていくと考えられます。