車の揚力:安定性への影響
車は地面を走る乗り物ですが、空気の中を走っているため、空気の影響を受けます。その影響の一つが揚力と呼ばれる、車を浮き上がらせる力です。揚力は、飛行機が空を飛ぶために必要な力と同じ原理で発生します。
飛行機の翼は、上面が緩やかな曲線を描いており、下面は比較的平らになっています。この形状により、翼の上面を流れる空気は、下面を流れる空気よりも速く流れます。空気の流れが速くなると、その部分の圧力は低くなります。これをベルヌーイの定理といいます。翼の上面と下面の圧力差によって、翼は上に持ち上げられる力を受けるのです。これが揚力です。
車は飛行機の翼のような形状ではありませんが、車体の上面も下面も空気の流れに影響を与えます。車の上面は緩やかな曲線を描いているため、飛行機の翼と同様に、上面の空気の流れは下面よりも速くなります。その結果、車体の上面に低い圧力が生じ、車を持ち上げようとする力が発生します。
この揚力は、車の速度が速くなるほど大きくなります。高速道路などでスピードを出すと、揚力が大きくなり、車が地面をしっかりと捉える力が弱くなります。タイヤの接地感が薄れ、ハンドル操作が不安定になる可能性があります。また、ブレーキの効きが悪くなることもあります。
そのため、車の設計では、揚力を小さく抑える工夫が凝らされています。例えば、車体の底面をなるべく平らにする、車体後部に小さな翼(スポイラーと呼ばれる)を取り付ける、などが挙げられます。これらの工夫によって、空気の流れを制御し、車体を地面に押し付ける力を発生させることで、揚力による悪影響を軽減し、走行安定性を高めているのです。