FWD

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エンジン

快適な運転を支える技術:吊り下げ式エンジンマウント

自動車の心臓部であるエンジンは、作動時にどうしても振動が発生してしまいます。この振動をいかに抑えるかが、乗り心地の快適性に直結します。そこで登場するのが、吊り下げ式エンジンマウントです。この方式は、主に前輪駆動の小型車で採用されている横置きエンジンを支えるための、工夫が凝らされた仕組みです。 まるでブランコのように、エンジンが車体から吊り下げられている様子から、別名「振り子式」とも呼ばれています。この吊り下げ式エンジンマウントは、エンジン上部と左右の3点で車体とエンジンを固定します。3点支持とすることで、エンジンをしっかりと支えつつ、振動を効果的に吸収する役割を果たします。 この方式の最大の特長は、エンジンの回転軸であるクランクシャフトとマウントの位置関係にあります。吊り下げ式では、これらがほぼ同軸上に配置されています。エンジンが回転する際に発生する振動は、回転軸を中心に生じます。この回転軸とマウントの位置を一致させることで、振動のエネルギーを効率的にマウントで吸収し、車体への伝達を最小限に抑えることができるのです。 従来のエンジンマウントでは、エンジンと車体の間に硬いゴムなどを挟み込んで振動を吸収していました。しかし、この方法では振動を完全に吸収しきれず、車内に伝わってしまうことがありました。吊り下げ式エンジンマウントは、エンジンの揺れをまるで振り子のように受け流すことで、より効果的に振動を吸収し、静かで滑らかな運転を実現しています。 つまり、吊り下げ式エンジンマウントは、エンジンから発生する振動という厄介な問題を解決するための、静粛性と快適性を向上させるための重要な技術と言えるでしょう。この技術により、ドライバーや同乗者はより快適なドライブを楽しむことができるのです。
カーレース

キットカー:最強二輪駆動車の世界

キットカーとは、競技専用の車を作るための部品一式のことです。世界ラリー選手権(WRC)で、二輪駆動車が主役の舞台に返り咲くことを目指して作られました。当時、WRCは四輪駆動でターボ付きの車が主流でしたが、それらに対抗できる車を作るために、キットカーという構想が生まれたのです。しかし、計画に参加する車の製造会社が少なく、目論見通りには進みませんでした。結果として、WRCの舞台でキットカーが見られる機会はごくわずかとなってしまいました。 キットカーは、既に販売されている車を改造して作られます。改造できる範囲が広いことが特徴で、エンジンやサスペンション、ブレーキなどを競技に耐えられるように大幅に改良することができます。市販車をベースにしているとはいえ、中身は全く別の車と言えるでしょう。キットカーは、軽い車体と強力なエンジン、そして高度なサスペンション技術を組み合わせることで、舗装路では四輪駆動のWRカーよりも速く走ることができました。WRカーのような複雑な四輪駆動装置を持たないため、車重を軽くすることができ、これが速さの秘訣でした。特に、曲がりくねった舗装路では、その軽快さを活かして、四輪駆動車を相手に互角以上の勝負を繰り広げることができました。しかし、未舗装路では四輪駆動車の安定した走りに及ばず、活躍の場は限られました。 このように、キットカーはWRCの主役の座を奪うことはできませんでしたが、二輪駆動車でも工夫次第で高い性能を発揮できることを証明しました。その存在は、モータースポーツの歴史に独特の足跡を残しています。
駆動系

快適な運転のための振動対策

車は、力を作り出す部分と、その力をタイヤに伝える部分でできています。力を作り出す装置全体をまとめて「動力部」と呼びます。動力部の振動とは、この動力部全体に起こる揺れのことを指します。動力部の心臓部である機械仕掛けは、小さな爆発を連続して起こすことで力を生み出しています。この時、ピストンと呼ばれる部品が上下に激しく動くことで、どうしても揺れが発生してしまいます。この揺れは、機械仕掛けと繋がっている他の部品、例えば動力の伝わる速さを変える装置などにも伝わり、動力部全体を揺らしてしまうのです。 さらに、動力部は車の中でも特に重い部品です。そのため、一度揺れ始めると、その揺れはなかなか止まりません。まるで重い鐘を叩いた時、長く音が響くのと同じです。この止まらない揺れが、乗り心地を悪くする大きな原因の一つとなっています。たとえば、ハンドルや床に伝わる微振動は、運転する人の手に痺れを生じさせたり、同乗者に不快感を与えたりすることがあります。また、大きな揺れは、車体全体の安定性を損ない、危険な状況を引き起こす可能性もあります。 このような動力部の揺れを抑えるために、様々な工夫が凝らされています。例えば、揺れを吸収する特別な部品を取り付けたり、動力部の配置を工夫することで揺れを車体に伝わりにくくしたりしています。これらの技術により、動力部の揺れは最小限に抑えられ、快適で安全な運転を実現しています。近年では、機械仕掛け自体を改良し、揺れの発生源から抑え込む技術も開発されています。これにより、より静かでスムーズな乗り心地が実現しつつあります。